その安さとオシャレさで、今や不動の人気を獲得したファストファッション。
ファッション雑誌でも「プチプラコーディネート(※)」のコーナーが
頻繁に見られるようになり、インスタグラムなどのSNSでも
ファストファッションの服を用いたコーディネートが多くアップされています。
あなたは普段、どのような洋服を着ていますか?
今や日本人の45%が、ファストファッションブランドの安価な服を身に着けている
という試算もあります。
今回は、ファストファッションのメリットとデメリットについてご説明します。
メリットとデメリットの前に「そもそもファストファッションって何!?」という方は、
当サイトの「ファストファッションとは?意味や歴史をご紹介!」をお読みいただけると幸いです。
(※)安い価格(プチ=小さい)で手に入るレディースファッションアイテム・化粧品・香水・雑貨などを指す略語。
ファストファッションのメリットは?
それでは、ファストファッションのメリットから見ていきましょう。
安さ!
メリットといえば、言わずもがな、その安さではないでしょうか。
流行のオシャレな服が、びっくりするくらいの価格で販売されています。
あこがれのハイブランドのショーウィンドウにディスプレイされている洋服と、そん色のないオシャレな洋服が、
なんと安いものなら1000円未満で販売されていることも。
「服に何十万もかけられないけど、流行は追いたい!」
という方にとっては、ファストファッションブランドはまさにパラダイス、
なのではないでしょうか。
商品回転の早さ!
そして、ファストファッションブランドのもう一つの強みといえば、
その商品回転の早さです。
日本でも人気のファストファッションブランド「ZARA」は、
なんと2週間に一度、新しい商品を店舗に投入しています。
いつ行っても常に新しい洋服が店頭に並んでいる、そんな真新しさ、
飽きさせない仕組みが消費者の購買意欲をかきたてるのでしょう。
人々を惹きつけて止まないファストファッションの売上については、
当サイトの「ファストファッションの売上ランキングは?国内ではどうなの?」を
併せてお読みいただけると理解が深まるかと存じます。
ファストファッションのデメリットは?
安くてオシャレ、流行の最先端を行く洋服がいつでも手に入る、
そういった強みを持っているファストファッションブランドですが、
デメリットは何でしょうか。
それは、まさに、「安くてオシャレ」の裏側に潜んでいました。
安さを実現するための過酷な低賃金重労働
「安さ」はどのようにして実現されているのでしょうか。
デパートなどで2万円で売られていてもおかしくないものが、
ファストファッションブランドでは5千円で買えてしまった、なんてことはよくあります。
あなたは、ファストファッションの洋服の生産地のタグを
ご覧になったことがあるでしょうか。
「ベトナム」「カンボジア」「中国」「バングラデシュ」などなど、
繊維産業の盛んなアジアの発展途上国などで生産されていることが
多いのではないでしょうか。
バングラデシュの現状
特にバングラデシュは多くのファストファッションブランドの
衣料品の生産地となっており、衣料品・縫製品産業が国の主要産業になっています。
輸出品目の約8割以上が衣料品であるほどです。
バングラデシュでは昔から繊維産業が盛んであり、
非常に良質な生地を作ることができたということもありますが、
バングラデシュが「世界の繊維工場」と呼ばれるまでになったその背景には、
「賃金の安さ」が挙げられます。
現在でも衣料品輸出世界第1位を誇る中国は、近年の経済成長で賃金も上昇。
代わって賃金の安いバングラデシュが注目され始めた、というわけです。
バングラデシュの最低労働賃金はどれくらい?
バングラデシュの最低労働賃金は、月当たり1800タカ(1800円程度)。
なんと、東京の最低「時」給で2時間分くらいが1か月の賃金なのです。
また、バングラデシュ繊維産業で働く労働者は、
過酷な労働条件のもと、働いていることも問題になりました。
2013年4月24日に起こった縫製工場の崩落事故では、
多くの労働者がなくなりました。
この工場は8階建てで、増加する発注に対応するため、
従業員からの危険性の訴えもむなしく、工場の増築を突貫工事で繰り返した結果、
数千台のミシンの振動でついに崩落してしまったのです。
その他、バングラデシュの縫製工場においては、
従業員への虐待や長時間労働を強制したり、
出産休暇などの取得すら拒否するなど、その扱いの過酷さも問題になっています。
私たちが安くオシャレを楽しめる背景には、
こうして低賃金で働きながら過酷な労働を強いられている労働者がいる
ということが分かります。
こういった事件から現在注目されているのが当サイトでも特集した「エシカルファッション」で、
ぜひこの機会にあわせてお読みいただけるとよりファストファッションの理解も深まると思います。
デザインの知的所有権を侵害する問題について
また、もう一つ、デメリットと言えることがあります。
先ほど、上記メリットの中で、ファストファッションブランドでは、
ハイブランドとそん色のないオシャレなデザインの洋服が安く買える、と述べました。
それは、裏を返せば、ハイブランド衣料品のデザインに「似せて」
ファストファッションブランドの洋服が作られている、ということです。
つまり、デザインの知的所有権が侵害されている状況、とも言えるのです。
以下の洋服、あなたはどちらがハイブランドで、
どちらがファストファッションブランドのものか、お分かりになりますか?
2018年秋冬はこうしたチェーン柄のシャツやスカートが流行のようですが、
流行を追い求めるがあまり、ファストファッションブランドの洋服は
どうしてもハイブランドのデザインに似たものになってしまいがちのようです。
しかし、ブランド物の偽物を摘発する法律はありますが、
「似せたもの」を訴えることは難しいと言えます。
商品の回転の早さゆえの大量のごみ問題
さらに、ファストファッションはその名の通り
商品の回転が「早い」ことが売りでもありますが、
それがゆえに、
多くの洋服が買っては捨てられ、すぐにゴミになってしまうことも問題視されています。
世界的に、プラスチックごみの廃棄場が減少していることも注目を集めていますが、
衣料品ごみの増加も見過ごすことはできません。
ヨーロッパでは1人あたり年間20キロ、アメリカでは35キロもの衣料品が
ごみとなってしまっています。
また、生産工場から流れ出た染料などの有害物質が
川に流されていることも問題になっています。
ファストファッションのメリット、デメリット 私たちが考えなければならないこと
一方で、こうした環境への負荷や労働者の過酷な労働環境が問題となり、
大手ファストファッションブランドの中には、
そうした問題の改善に取り組んでいるブランドもあります。
バングラデシュの縫製工場倒壊事故を受け、以下の2つの同盟が結成されました。
- 「アコード(バングラデシュ火災・建物安全合意)」
ヨーロッパの企業、国際労働機関やNGOが中心のバングラデシュ縫製工場の安全性確保のための国際合意 - 「アライアンス(バングラデシュ労働者の安全のための同盟)」
アメリカの企業を中心としたバングラデシュ労働者の安全のための同盟
大手ファストファッションブランドは上記のどちらかに加盟していることが多いようです。
大量のごみ問題への取り組みも
また、衣料品のごみを減らすべく、「H&M」などでは
古着リサイクルのために500円クーポンとの交換などを行っています。
「ZARA」や「ユニクロ」でも古着の回収・途上国への寄付などに努めています。
どちらのお店も、どこで購入した洋服でも引き取ってくれます。
私たちが毎日着る洋服。
ファストファッションブランドは日本をはじめとする先進諸国では
今や完全に定着しつつあります。
季節ごとに新しいデザインが出て、お手軽に流行が楽しめる
ファストファッションブランドはとても魅力的ですが、
その裏では環境破壊や過酷な労働を強いられている人々がいるということを、
改めて考えてみる必要がありそうです。
ファストファッションのメリット、デメリット おわりに
いかがでしたか?
インスタグラムや雑誌の特集などで、普段は華やかで魅力的なものとして
目に映るファストファッションブランドの洋服たち。
今回は、その裏に隠されている、目をそむけたくなる事実に焦点を当ててみました。
私たち一人一人が、この事実を真剣に考え
「この洋服、本当に必要かな?」「適正な価格の商品を買おう」と、
一つ一つの行動を見直すことこそが真の国際貢献につながるのではないでしょうか。
ファストファッションの裏側を紹介した映画のご紹介
さいごに、ファストファッションの裏側をとらえた映画をご紹介いたします。
前述したファストファッションの代償についてのドキュメンタリー映画です。
『ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション真の代償~』(2015)
私たち一人一人の行動に責任があるのだと思い知らされます。
最後までお読みいただきありがとうございました。