学校、職場、近所づきあい・・・
人は一人で生きていくことはできません。
頭ではわかっていても、
- 人と関わることが怖い
- 話そうとすると息が苦しくなる
そんな人との関わりに苦痛を感じている人は「対人恐怖症」かもしれません。
そこで、対人恐怖症とは?無理しない治し方をわかりやすくご紹介します。
対人恐怖症とは?
対人恐怖症とは、他人との交流や人前でのふるまいに強い不安や緊張を感じ、
日常生活に支障が出ている状態のことです。
社交・対人への恐怖は、対象になっている人や状況そのものが怖いわけではなく、
他者と接した際
- 「悪く思われるのではないか」
- 「自分は変な心象を与えているのではないか」
と疑心暗鬼に駆られてしまいます。
- プライドが高い人
- 笑われた経験
などが背景になっていることもあります。
治療が必要な対人恐怖症とは?
恐怖は人間だれしも抱える自然な感情の1つで、
程度に差はあるにしても、全く恐怖を感じない人はいないでしょう。
では、対人恐怖症はどんなときに治療がすすめられるのかと言うと、
- 恐怖が一般の程度に比べあまりに強く、本人や周囲の人が非常に困っている
- 日常生活や仕事に大きな影響が出ている
のいずれかに当てはまるときです。
対人恐怖症の無理しない治し方は?
対人恐怖症は、放置していても改善する可能性は低いとされています。
というのも、海馬や扁桃体に記憶された緊張や失敗の記憶から
- 「次も失敗するかもしれない」
- 「何をやっても失敗する気しかしない」
という「予期不安」が形成され、
不安や緊張を感じそうな状況を回避するようになるからです。
回避行動が習慣になると、
その状況に対する不安がより強くなるという悪循環に陥ります。
症状を放置せずに適切な治療を受けることで、
少なくとも最悪の状態からの改善は期待できるといえるでしょう。
対人恐怖症の治療先
対人恐怖症の治療は、精神神経科や心療内科で受けることができます。
精神神経科は、心の病気を扱う診療科です。
心療内科は、心の問題が関係して体の症状があらわれていると考えられる疾患
を扱ってもらえます。
対人恐怖症では多くの場合、精神と身体の両方に症状が出るため、
どちらの診療科でも治療対象となります。
ただし現在では「対人恐怖症」ではなく、
「社交不安症」との診断名がつけられます。
相談できる公共機関は?
病院へ行くのがためらわれる場合、まずは公共機関に相談する方法もあります。
精神保健福祉センターは各都道府県、
または各政令指定都市に1か所ずつ設置されており、
心の不調や精神疾患などについての相談を受けつけています。
センターによっては、
- 医師
- 看護師
- 精神保健福祉士
などが対応してくれるところもあります。
対人恐怖症の治療法は?
対人恐怖症の治療法には、
- 精神療法
- 薬物療法
の2種類があります。
精神療法の代表的な治療法となるのが「認知行動療法」です。
①精神療法(認知行動療法)
対人恐怖症の人は、物事を否定的にとらえる傾向があります。
そこで、認知行動療法によって、
不安や恐怖につながっている否定的な認知(物の考え方や受け取り方)を、
事実に沿った客観的なものに変えていきます。
その上で、これまで回避してきた状況下での
新たな行動パターンを定着させていきます。
②薬物療法
薬物療法で使用される薬は、主に以下の3種類です。
抗うつ薬(SSRI)
うつ病の治療薬であるSSRIは、社交不安症治療で多く使用される薬です。
安心や鎮静の情報を神経に伝える脳内物質「セロトニン」の濃度を高めることで
不安や恐怖をおさえます。
SSRIは効果が出るまでに数週間を要するため、中長期的な服用が必要です。
服薬期間の間に「不安や緊張を感じなかった」という成功体験を重ねることで
良い印象の記憶が残るため、対人恐怖症の改善が期待できるのです。
抗不安薬
抗不安薬は脳神経に作用し、不安や緊張をやわらげる薬です。
即効性がある反面、効果は一時的です。
長期使用では依存性があらわれる可能性があるため、
あらかじめ不安になる状況が予想される場合に、
不安を除去する目的で補助的に使用します。
β遮断薬
β(ベータ)遮断薬とは、
正式には「交感神経β受容体遮断薬」と呼ばれる薬のことで、
交感神経に作用し、動悸や震えなどの身体症状をおさえる薬です。
しかし、不安や緊張などの感情をやわらげることはできません。
効果は一時的であるため、あらかじめ不安になる状況が予想される時に、
身体症状を抑える目的で補助的に使用します。
対人恐怖症の症状を軽減するための日常生活での工夫は?
治療以外にも、日常生活において以下のような工夫をおこなうことも、
対人恐怖症の症状の軽減に役立ちます。
規則正しい生活
規則正しい生活は、対人恐怖症の症状改善のためにした方がいい基本的な方策です。
対人恐怖症の人は、脳内のセロトニンの量が低下しています。
セロトニンは、人間の体の生体リズムに合わせて分泌されます。
このため、十分なセロトニン分泌のためには
「朝に目覚め、夜に眠る」という、
人間本来の生体リズムに合わせて生活することが重要となります。
また、セロトニンを食事からとるには
カレーとバナナなども有効とされています。
②十分な睡眠
十分な睡眠は、対人恐怖症の身体症状の軽減に役立ちます。
質のよい睡眠時は、交感神経を優位に導く
アドレナリンやノルアドレナリンの分泌量が低下し、
リラックス状態になります。
しかし、この働きが上手くいかないと睡眠不足の状態となります。
アドレナリンやノルアドレナリンの分泌量は上がったままで維持されるため、
睡眠不足時には体が緊張状態になっており、
不安を感じる場面で身体症状があらわれやすくなります。
③適度な運動
これまでの研究により、社交不安症を含む不安障害の改善には、
適度な運動を習慣的に行うと効果があることがわかっています。
早足でのウォーキングや水泳などの
有酸素運動の効果が期待できるとされています。
運動は
- 心身をリラックスさせる
- 良質の睡眠につながる
ことからも、対人恐怖症の症状の軽減に有効だといえるでしょう。
対人恐怖症とは?無理しない治し方をわかりやすくご紹介 おわりに
対人恐怖症は、治療が可能な疾患です。
薬物療法や精神療法に加え、
日常生活でも工夫をおこなうことで症状が軽減していきます。
「性格だからどうしようもない」と諦めずに、
医師や公共機関に相談してみることが症状改善の一歩となるでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。