あなたはGSOMIAというワードを知っていますか?
GSOMIAは日韓の軍事協定ですが、非常に不安定な局面が多く、
2019年の日韓の対立に伴い、破棄となる危機を迎えていました。
結果として破棄となる直前に撤回はされたのですが、
その後2020年8月24日、何事もなかったかのように延長されました。
「うーん、そもそもGSOMIAって実際にどういう目的の協定なの?」
「破棄したら日韓関係はどうなるの?争うの?」
「韓国はどうして破棄を撤回したの?」
と、GSOMIAが一体どういう目的の協定で、どんな内容なのか、
国民としては気になるところです。
そこで今回はGSOMIAがどんな協定なのか、
破棄するとどうなるのかを考えていきましょう。
ふむ。GSOMIAは無事延長されたようじゃの。韓国紙では『韓日対立の小康局面がしばらく続くのでは』と報じられているようじゃ
隣国に関心を持つのは当然じゃろうて。安全保障のことをしっかり考えておかんとそのうち戦争に巻き込まれるぞ
今だって北朝鮮から日本海にミサイルは飛んでくるじゃろ。いつ戦争が始まってもおかしくない緊張感の中で、GSOMIAは安全保障のためにも大切な協定なのじゃ!
GSOMIAとは?
GSOMIAとは日本語で
「軍事情報に関する包括的保全協定(ほうかつてきほぜんきょうてい)」という意味を持ちます。
簡単に言うと、仲の良い複数の国の間で秘密の軍事情報を提供し合う際に、
関係ない第三国への情報漏洩(ろうえい)を防ぐために結ばれた協定です。
この協定は、軍事技術だけではなく戦術データ、暗号情報、高度なシステム統合技術など
有事の際の共同作戦に必要な情報の全てが対象となります。
日本はアメリカ合衆国やNATOなど7カ国とこの協定を締結していますが、
問題になっているのは日韓で結ばれた協定のことです。
2016年11月23日、日本と韓国は『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』を結んだ。これは弾道ミサイル発射の兆候など、秘匿性の高い軍事情報を交換することが目的だった
でも、日本も韓国も、それぞれアメリカと同盟を組んでいるんだから、別々にアメリカに聞けばいいんじゃないの?韓国もGSOMIAは必要ないわーって破棄するって言うわけだし
それでは、緊急時に時間がかかりすぎてしまうことがある。それに、この協定の主の目的は、情報の『保護』にあるのじゃ。協定を結んだら、相手の秘密を同意なしに第三者に伝えられないように定められている。また、情報を取り扱う者も限られている
つまり『秘密の話をするための条件』ってことなのね
その通り。防衛省の関係者は、『これがなければ、防衛相会談を行っても、秘密の話はできない』とも語っておる
実際にはどのように情報のやり取りをしているんだろう?
元海将で、金沢工業大学虎ノ門大学院の伊藤俊幸教授によれば、アメリカの情報システムを介して、日米韓の3か国で情報をやり取りしているのが実態だそうじゃ。元々日本と韓国は、それぞれがアメリカとGSOMIAを締結していて、アメリカのシステムに秘密の情報を登録しておる。アメリカによる情報も同様に登録され、そのシステム上で情報を共有するのじゃ。システム上で、日韓両国がお互いに登録した情報を見られるようにしたのが、日韓のGSOMIAというわけじゃ
なるほど、まぁ複数国が関る方が2国が喧嘩しても1国が仲裁に入ってくれて争いは減りそうだよね
GSOMIAで実際にやりとりされる情報とは?
では、実際に日韓両国が直接相手から入手する情報としては、
具体的にどんなものがあるのでしょうか?
韓国が欲しがる日本側の情報としては、
北朝鮮東海岸方面の電波傍受情報が挙げられます。
日本では防衛省情報本部の新潟県小舟渡通信所と鳥取県美保通信所が、
北朝鮮の電波情報を追っている他、
海上自衛隊は独自にEP-3という電子戦データ収集機を飛ばし、
電波情報を収集しています。
弾道ミサイル発射を含む北朝鮮軍の動きは、
こうした電波傍受により監視できるのです。
電波情報は単に傍受だけではなく、蓄積した情報資料と照合するなどの分析が重要とされる。自衛隊にはその点、独自の蓄積もそれなりにあり、過去にも北朝鮮のミサイル発射準備の兆候を察知しておるのじゃ。韓国にとっては、自分達で集めた情報の他、日本から補足となる情報が得られればとても有益なのじゃ
北朝鮮のミサイル発射実験が多いから常に把握・分析しておきたいよね
海上自衛隊の潜水艦や哨戒機(しょうかいき)は、日本海を日常的に哨戒し、北朝鮮の潜水艦の動きなどの情報を集めている。他にも有益な情報として、航空自衛隊のレーダーサイトやイージス艦のレーダーによる弾道ミサイルの追尾情報があるぞ
逆に韓国から日本に渡される情報はないの?
韓国側が有利なのは、何と言っても休戦ライン(北緯38度線)沿いでの監視情報じゃ。地上設置レーダー、電波傍受施設、航空機や艦艇による偵察・監視などによって情報を収集しておるぞ。また、それらに加え、『脱北者がもたらす機密情報』などもしばしば共有対象として例示されておるが、機密性が高い情報なので共有されることは稀のようじゃ
日韓どちらにも有益な情報がもたらされるわけだね。ただ、北朝鮮については、より距離的に近い韓国のほうが、日本より多くの情報を持ってそうじゃない?そもそも韓国側は日本の情報、要らないんじゃないの?
確かに。日韓の軍事情報共有はまだ日が浅く、まだそれほど多くの秘密指定の情報を提供し合ってはいない。繊細な情報を扱う分野故に信頼関係が大事になってくるが、スタート間もない段階でこじれてしまったことになる。実際のところ、仮にいますぐGSOMIAが破棄されたとしても、日韓両国が被る実害はそれほど大きくないだろう。とはいえ、将来的なメリットを考えれば決して軽い損失とは言えない
GSOMIAを破棄するとどうなる?
では実際にGSOMIAが破棄されるとどうなるのでしょうか?
まず、日韓は互いに情報を共有できなくなります。
そこで、アメリカを介して情報をやり取りすることになるのです。
ところが、アメリカは勝手にその情報を教えることはできないので、
日本「アメリカさん、韓国さんのA情報教えてよ」
米国「ちょいまち、内容確認するわ、うーん、まぁこれは確認させていいか。じゃ韓国さんに確認するわ、おーい韓国さーん」
韓国「なんや、A情報を日本がほしいって?Aはダメダメ、Bまでなら教えるで~、って日本へ言っておいて」
米国「わかった、その前に俺らもB情報を精査するで。まぁいいか。おーい、日本さーん、A情報ダメだけどBまでならええってよー」
日本「えぇ~Bまで?ならCもくれよ。」
米国「・・・(俺を挟まずやってよ)」
と、問い合わせる必要が出てきます。
間に挟まれたアメリカが、毎回情報の中身を精査して提供可能か判断することになるので
時間がかかってしまうことは容易に想像つきますよね。
北朝鮮のミサイル情報はリアルタイムでほしいし、時間がかかってしまうと無意味じゃ。地域の安定のためには日米韓の協力は欠かせないのじゃ
ミサイル怖いよー。韓国は北朝鮮が怖くないのかな?
GSOMIA破棄問題は北朝鮮の脅威についての認識が、根本的に異なることが露呈したともいえるな。GSOMIAが破棄されれば喜ぶのは北朝鮮、中国、韓国……
GSOMIAってそんなに重要な協定なの?
GSOMIAはそれ自体は情報保全のための協定じゃが、本質的には、日米韓の軍事的な連携を深めるための基礎となるものじゃ。それが破棄されるということは、日米韓の安全保障に対する妨げとなってしまう。日米韓の連携というのは、実は3カ国に限った話ではない。アメリカはオバマ政権のころから、米軍の負担を縮小しつつ、軍事大国化する中国の脅威に対応するため、軍事的な多国間協力を進めておった。そのために日米韓のみならず、オーストラリア、カナダ、イギリス、フランス、インドなども加わって、軍事的な中国包囲網の整備が進められておる。対北朝鮮もその大きな枠組みに含まれておるのじゃ
大きな安全保障の構想にGSOMIA問題が横やりを入れてしまっている感じになっているね
GSOMIA問題は日韓だけの問題ではなく、環太平洋の安全保障に対する悪影響を与えてしまっておるのじゃ
GSOMIA破棄撤回の流れや背景は?
韓国政府は去年8月、日本が輸出管理を厳しくした措置への対抗措置だとして、
GSOMIAを破棄すると日本側に通告しました。
しかしながら、2019年11月22日、韓国のムン・ジェイン政権は、
日本と韓国のGSOMIAの終了通告を停止することを決定。
このことにより、協定は当面維持されることになりました。
2020年8月に一度、終了通告をしたGSOMIAの維持を韓国政府が決めた背景について、
考えられる理由は以下の通りです、
①アメリカからの「いやいや維持しとけや」と強い圧
②日韓両国の外交的取り組み
③韓国の国内状況
アメリカは通常ならば日韓の歴史問題は静観する構えじゃが、アジアの安全保障を脅かしかねない韓国の姿勢に対し、強い圧力をかけた。2019年11月には、スティルウェル国務次官補、エスパー国防長官、ミリー統合参謀本部議長が相次いで韓国を訪問して、協定の維持を求めたとされておる
立て続けに説得されてる…。韓国もアメリカの圧を受けるんだね
韓国軍は転換期にあるのじゃ。冷戦期から、アメリカ軍が主導してきた米韓連合防衛体制は、韓国軍が主導する形へと変わろうとしている。この作業をアメリカとの協力により順調かつ迅速に進めることが、ムン・ジェイン政権の外交安全保障における目標の一つじゃ
なるほど、アメリカとの同盟関係を守るためにはGSOMIAを破棄するわけにはいかなくなったってことだね
うむ、日本政府もまた、アメリカに促される形で韓国と外交的な取り組みをした。韓国政府は日本による輸出管理強化措置の撤回が、GSOMIA維持の前提条件としてきた背景がある。日本側は今回、輸出管理の問題とGSOMIAは別問題であるという立場を維持しながらじゃが、日韓両国の貿易管理当局による政策対話を行う姿勢を示した。これが、韓国側の方針転換を促したのじゃ
なるほど、日本も韓国に歩み寄る姿勢を見せたわけだね
また、韓国内での状況も大きく影響した。GSOMIA問題以前に法務部長官任命を巡りムン・ジェイン政権の支持率は大きく下落していた。そんな中で保守系の野党やメディアは、日韓GSOMIAの終了は韓国の安全保障を脅かし、米韓同盟関係をも揺るがすものだとして、攻勢を強めていた
野党に攻め立てられたのか……。でも、韓国の国民はGSOMIA終了を支持していたんでしょ?
その通り。日本による輸出管理強化に強く反発している韓国世論の多くは、GSOMIA終了の決定を支持した。2019年11月中旬の世論調査でも、半数以上がGSOMIAの終了に賛成と答えており、ムン政権にとって、今回のGSOMIA維持の決定は国内政治的には難しい決定だったと言えよう。ただ、GSOMIA維持を決定した後の世論調査では、70パーセント以上がそれを支持していた。韓国の世論も、これ以上の日韓関係の悪化を望んではいなかったのだろう
今後の日韓関係はどうなる?
GSOMIAは、日本と韓国のどちらかが破棄を通告しないかぎり、
1年ごとに自動的に延長される取り決めになっています。
破棄する場合は、90日前に通告する必要があり、
毎年8月24日が期限となっていますが、今年は延長されました。
GSOMIAについて、韓国外務省の副報道官は
「われわれは、特別な期限を定めず、いつでもGSOMIAを終了できるという前提のもと、破棄の通告を停止した。
韓国政府はいつでも終了できる権利を持っている」
と主張しました。
さらに副報道官は
「われわれは当局間の協議再開を通じて、日本が輸出規制措置を撤回することを引き続き求める」
と述べたのです。
これらの韓国側の発言に対し、米国務省の報道官室の関係者は
2020年8月6日米国政府が運営する国営放送でこう述べています。
「日本と韓国が、迅速で効率的な軍事情報を共有するという内容は、
日本と韓国の安保だけでなく米国の安保にもとても重要であり、更に広い地域の安定にも重要だ」
韓国がGSOMIA破棄をちらつかせる狙いは、輸出規制制限の撤回じゃろうて。しかし、アメリカはGSOMIA破棄を許さない。韓国はアメリカとの同盟関係維持のためにGSOMIAは破棄できない状況だ
韓国は輸出規制で困っているんだね。本当は破棄する気がないのに言っているだけなのかな?
国内に向けての発言とも言える。韓国政府は国内の人気維持のために日本には強硬な姿勢を取らなくてはいけないからな
でも、とりあえずはGSOMIAは延長されたんでしょ?
その通り。これからは日韓対立は小康状態になるだろう。しかし、ムン政権が北朝鮮寄りな姿勢を変えない限りは地域の安定は望めないだろう。また、日本でも安倍首相が辞任し、韓国に対する姿勢が変わってくるだろう。今後の動向から目が離せんな
GSOMIAとは?破棄すると日韓関係はどうなるかわかりやすく紹介 おわりに
いかがだったでしょうか?
GSOMIAはまだ始まったばかりの協定ではありますが、
アジアの今後の平和のために必要な協定に見えますよね。
日米韓が同じ方向を向いて情報を共有できれば素晴らしいことですが、
現在は信頼関係が築けていないので難しそうな状況です。
それぞれに主義主張があるのだから、同盟を組むということは難しいことなのじゃ。しかし、北朝鮮という脅威から国を守るという共通の目的のためにも、GSOMIAは維持してもらいたいものじゃな
最後までお読みいただきありがとうございました。