あなたはインスリンをご存知でしょうか?
糖尿病(とうにょうびょう)の治療に使われていることで有名ですが、
詳細は知らないという方が多いのではないでしょうか?
実は糖尿病は40歳以上に4人に1人と急増しているのです。
今回は糖尿病とインスリンの関係について紹介していきます。
御パンダ、ゴロゴロしてばかりじゃいかんぞ。生活習慣病に気を付けるのじゃ
ぎくっ!そういえば最近運動不足で太ってきたような……
気を付けないと2型糖尿病になるぞ。2型糖尿病は体質やカロリー過多、運動不足、肥満などが原因で、インスリンの分泌量が減ったり、働きが低下することによって生じるのじゃ
糖尿病!?それってどうなっちゃうの?インスリンって何?
合ふむ、これは命に係わる危険な話じゃから早い方がいいじゃろう。インスリンと糖尿病について説明しようか
インスリンと糖尿病とは?
インスリンは血糖を下げる働きのあるホルモンで、すい臓のベータ細胞で作られます。
通常、糖分を含む食べ物は消化酵素などでブドウ糖に分解され、
小腸から血液中に吸収されます。
食事によって血液中のブドウ糖が増えると、すい臓からインスリンが分泌され、
その働きによりブドウ糖は筋肉などへ送り込まれ、エネルギーとして利用されます。
このようにインスリンには、血糖値を調整する働きがあるため、
糖尿病でインスリンが不足した場合の治療としてインスリン注射を行い、
インスリンを外部から補わなくてはいけません。
お腹のちょうど中心にある『すい臓』という臓器に、『ランゲルハンス島のβ細胞』という名前の細胞がたくさんあり、インスリンはこの細胞で作られておる
・・・。インスリンは人の身体の中で唯一、血液中のブドウ糖(血糖)を少なくする働きをもっているのじゃ。そのため、食後に血糖値が上がった際、すい臓からのインスリンの分泌が遅れたり、量が少ない場合、あるいは分泌されていてもインスリンがうまく働かないなどインスリンの効果が発揮されない場合、糖尿病になってしまう
ふーん、ところで、糖尿病ってどういう病気?インスリンの効果が発揮されないとどうなっちゃうの?
高血糖になってしまう。インスリンが足りないと血液が糖だらけになり、糖が急に増えたことで活性酸素が大量に発生してしまう。その結果、糖が血液で渋滞を起こし、活性酸素が血管を破壊してしまうのじゃ
血管を破壊!?そうなったら身体はどうなっちゃうの?
まずは、足や手に痛みやしびれが出る。その他、頻尿、多尿、多汗、喉が渇くなどの症状が出る。更に血糖値が高い状態が続くと合併症が発生する。主な合併症は以下の通りじゃ
- 糖尿病神経障害(とうにょうびょうしんけいしょうがい)……神経細胞に血液が届かなくなり、全身の神経に障害が起こる。
- 糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)……血糖値が高い状態が続くと目の毛細血管が破れて酸素や栄養が届かなくなり失明することもある。
- 糖尿腎症(とうにょうじんしょう)……血糖値が高い状態が20年ほど続くと腎臓が機能しなくなり人工透析が必要になる。
発汗異常や立ちくらみ、便通異常、男性の場合は勃起障害になることもある。ちょっとした傷や水虫により足が腐り、年間2万本もの足が切断されておるぞ
ちなみに糖尿病には2種類あり、生活習慣病と呼ばれるのは2型糖尿病の方じゃ。2種類の糖尿病の違いと治療法について解説しよう!
糖尿病の種類と治療法は?
糖尿病には
の2種類があります。
1型糖尿病
何らかの原因でインスリンの分泌ができなくなる疾患。
すい臓のインスリンを出す細胞(β細胞)が壊されてしまう病気で、
一般的には進行性。
インスリンを注射により補う治療が必須となる。
10代などの若者に多い。
2型糖尿病
糖尿病の95%を占める。
などの生活習慣が原因で、
インスリンのはたらきが低下することによって起こる疾患。
中高年に多く見られるが若年化が進んでいる。
治療は基本的に
の3つを組み合わせて行われる。
つまり、糖尿病の治療の基本はインスリンの不足を補うことなの?
その通り。糖尿病の治療も目的は高血糖が引き起こす色々な合併症を予防する、または悪化を阻止することじゃ。そのためにインスリンの作用不足を解消し、血糖値をできるだけ正常にする必要がある。まずは食事療法と運動療法で生活習慣の改善を行う。それでも血糖値が下がらないときは内服薬や注射薬による治療が行われている。ただし、最近では高血糖毒性をとり除くために、早期からインスリン注射薬を使ったり、また、比較的軽症の糖尿病にもインスリン注射薬を用いる場合があるぞ
高くなった血糖そのものが、インスリンの分泌不良を招いたり、インスリンの働きを悪くしてしまうことを糖毒性というのじゃ。インスリンが少なくなると肝臓や筋肉でインスリンの働きがますます低下し、さらなる高血糖を誘発する
そう、その負のスパイラルに陥らないためにも、悪化を防ぐためにインスリンを注射するのじゃ。そうすることで、すい臓の働きが回復し、血糖をコントロールできるようになる
人類の英知だね。でも、インスリン注射って痛そうだなー。どんな感じなの?
インスリン注射にも色々あるからな。効果があらわれるまでのタイミングや持続事件によって種類が分かれておる。それぞれの特徴を解説しよう!
インスリン製剤の種類とは?
すい臓からのインスリン分泌には、2種類あります。
- 1日中ほぼ一定量が分泌される・・・基礎分泌
- 食事などの血糖値の上昇に応じて分泌される・・・追加分泌
1型糖尿病では「基礎分泌」と「追加分泌」がともに障害されています。
2型糖尿病では早期は特に「追加分泌」が障害されており、
さらに進行すると「基礎分泌」も障害される場合があります。
患者さん1人ひとりによってインスリンの分泌状態は違う。インスリン療法では健康な人のインスリン分泌パターンを再現することを理想としており、『足らないインスリン量を、足らない時間帯に、的確に補充する』ためにインスリンを注射するのじゃ」そのため、患者さんのインスリン分泌の状態にあわせて、1種類あるいは2種類のインスリンを1日1~4回注射し、血糖コントロールのよい状態をつくっていくのじゃ
インスリンって色々種類があるんだね。どれくらいあるの?
インスリンの種類は作用する時間によって6つに分けられる。同じ分類内でも投与方法や作用時間などに少しずつ違いがあるので、患者さんの糖尿病の状態や、合併症の有無、ライフスタイルを十分に見極めたうえで、患者さんにいちばんあったインスリン製剤が処方されるぞ。インスリンの種類は以下の通りじゃ
- 超即効型インスリン製剤
食直前に自己注射する。
注射後、インスリンの作用があらわれるまでにかかる時間は10~20分。インスリンの作用が持続する時間は3~5時間。
- 即効型インスリン製剤
食前に自己注射する。
注射後、インスリンの作用があらわれるまでにかかる時間は30分~1時間。インスリンの作用が持続する時間は5~8時間。
- 中間型インスリン製剤
朝食前30分以内のものや、朝食直前のものがあり、場合によっては1日の投与回数を増やして自己注射することができる。
注射後、インスリンの作用があらわれるまでにかかる時間は30分~3時間。インスリンの作用が持続する時間は18~24時間。
- 混合型インスリン製剤
超速効型または速効型インスリン製剤と中間型インスリン製剤を、色々な割合で混ぜてある製剤。
朝食直前のもの、朝食直前と夕食直前のもの、朝食前のものや、朝食前と夕食前30分以内に自己注射するものがある。
超速効型または速効型インスリン製剤と中間型インスリン製剤のそれぞれの作用があらわれるまでにかかる時間に効果がでるが、持続時間は中間型インスリンとほぼ同じ。
- 配合溶解インスリン製剤
超速効型インスリン製剤と持効型溶解インスリン製剤(下にて説明)を混ぜてある製剤。
朝食直前に1日1回または朝食直前と夕食直前の1日2回自己注射する。
超速効型インスリン製剤と時効型溶解インスリン製剤のそれぞれの作用があらわれるまでにかかる時間に効果がでるが、作用時間は持効型インスリンとほぼ同じ。
- 持効型溶解インスリン製剤
朝食前のもの、夕食前のもの、就寝前のもの、朝食前と夕食前のものや、朝食前と就寝前に自己注射するものがある。
注射後、インスリンの作用があらわれるまでにかかる時間は1~2時間、インスリンの作用が持続する時間はほぼ1日にわたる。
1日中の血糖値を全体的に下げる。
こんなにたくさん種類があるんだね。自分の症状やライフスタイルに合わせて処方されるってことか。ちなみに自己注射ってどうやるの?
インスリンは、指示された時間に自己注射する。注射する部位は、お腹、腕、太ももなどじゃ。自己注射ではお腹や太ももが注射しやすじゃろう。ただし、注射部位によってインスリンの吸収に若干差がありますから、主治医や薬剤師に相談しよう。注射は同じ注射部位内で、毎回2~3cmくらいずつずらしていくぞ。原則として、今回はお腹で次は太ももなどのように注射部位を毎回変えることはしない
御パンダ「痛そうだなー。針ってどれくらいの太さなの?」
注射針は採血用の針と比較してとても細いものを使うぞ。長さはいくつか種類があるので、皮下組織に届く長さのものを選ぼう。やせている人で針が筋肉にとどいてしまう場合には、注射部位をつまんだり、針を少し斜めに射すこともあるが、通常は、最も短い4mmの針を使って皮膚に対してまっすぐに根元まで刺す。太っている人は、逆に適切な場所にとどかない場合があるので、8mmの針がよい
細いんだったら痛くないかなぁ。でも注射を打つのって難しそう
現在は薬や注射器がどんどん進歩して、とても簡単に注射できるようになっておるぞ。『インスリンペン型注入器』というとても便利な注射器が開発されて、手軽にインスリン注射ができるのじゃ。インスリン製剤には、使い捨てタイプのキット製剤と、インスリンペン型注入器にカートリッジ製剤を装着して使用するタイプがある
へー。ペン型なら持ちやすくて使いやすいかも!インスリンを正しく補えれば糖尿病も怖くないかも!
ちょっと待て。糖尿病はそんなに簡単に治るものではないし、長く付き合っていかなければならない病気じゃぞ。それにインスリンには副作用もあるのじゃ
では、インスリンによる副作用について紹介しよう
インスリンの副作用は?
インスリン製剤は、血糖を下げる特効薬であり、
インスリンで血糖を下げられない糖尿病はほとんどない、
といっても過言ではありません。
インスリンレセプター(インスリン受容体)の異常のために糖尿病になった場合は、
インスリン注射は効きませんが、このような糖尿病はとてもまれです。
しかし、インスリンには以下のような副作用があるのです。
低血糖症
ちょっと待って。インスリンは血糖を下げる作用があるんでしょ?血糖が低くなるのは当然の効果なんじゃない?
うむ。血糖値を下げるために使っているのだから正しい作用である。しかし、低血糖を起こすまで血糖値を下げたいとは思わなくても、血糖値が下がってしまうことがあり、これが副作用ということになる
運動後遅発性低血糖症や無自覚性低血糖症などは、この副作用によるものともいえるな
糖尿病の治療で、インスリン治療または血糖降下剤の内服をしている場合、運動量が多すぎたり、空腹時に激しい運動をした時の運動中や運動後に低血糖を起こす場合がある。特に運動後遅発性低血糖の場合は、運動が終了してから10数時間後の深夜に突然低血糖を起こすことがあるのじゃ
なんで?せっかく糖尿病の人が運動してるのに!
うむ、これは、運動により薬やインスリンの効きが良くなるためで、激しい運動をしたときは、丸1日低血糖に対する注意が必要なんじゃ。また、無自覚性低血糖はインスリンなどを使用している糖尿病患者において認められる。動悸、頻脈(ひんみゃく)などの低血糖時に先行して起こるはずの症状がないまま、急に意識レベルが低下し、意識を失うなどの中枢神経症状へ至る。例えば、運転中に無自覚性低血糖に陥れば,重大な事故につながる可能性もあるから注意が必要じゃ
うわー。自覚していないときに急に症状がやってくるんだね!これは怖い
インスリンアレルギー
インスリン注射したあとかならず、なんとなくかゆくなり、見ると注射部位に一致して赤くなっていることがある。1回、2回ではなく、注射するたびに注射部位の皮膚がかゆくなり赤くなり、時間経過とともに治るのを繰り返す。この場合インスリンアレルギーが疑われる
これはIgEというインスリン抗体が産生されるためと言われておる。あるいはインスリン製剤の中に入っている添加物(防腐剤など)が原因になっていることもある
インスリン抗体による低血糖および高血糖
かつて牛や豚など動物由来の純度の低いインスリン製剤が使用されていた時代には。ほとんどのインスリン治療患者にインスリン抗体が見出された。現在使わっれているインスリン製剤はヒトインスリンと同じものじゃ。そのため、通常はインスリン製剤に対して、我々の体は抗体というものをつくらない。ところが、まれにインスリン抗体を産生する場合がある
インスリン抗体ができると何か影響があるの?
ほとんど影響はない。しかし、時に低血糖をおこしたり、高血糖をおこしたりして、血糖コントロールがとても困難になることがあるのじゃ
インスリンリポジストロフィー
なんか難しい単語だね。ポジストロフィーって何?
難しい言葉じゃが、要するにインスリン注射部位の皮膚の変化のことじゃ。インスリン注射部位が膨らむことを、インスリンリポハイパートロフィー、インスリン注射部位がへっこむことをインスリンリポアトロフィーという。インスリンリポハイパートロフィーは、長く同じ場所ばかりに注射していると、よくおこる。インスリンの効きがわるくなったり、血糖値が思うより下がったり、うまくいかないな、と思うときによくあるのじゃ。場所を変えて注射するとまたよく効くようになるぞ
うーん。副作用の話を聞くとインスリンを打つのが怖くなってくるね
しかし、インスリン療法は糖尿病の治療にはなくてはならぬものじゃ。インスリン製剤は劇薬であることを忘れず、主治医に相談しながら注射してほしい
インスリンとは?種類や糖尿病との関係、副作用もわかりやすくご紹介 おわりに
いかがでしたか?
我々の生活習慣と繋がっている病気である糖尿病。
治療にはインスリンの投与が必要となる場合があります。
インスリンは血糖を下げる特効薬ですが、劇薬であり副作用もあります。
出来る限りインスリンを使わなくてすむように、糖尿病を予防し、
糖尿病になったとしても運動療法で治療していけたらいいですね。
しかしI型の糖尿病など
どうしてもインスリンと付き合っていかなければならない病状の方もいます。
その場合、自分に合ったインスリン製剤を投与できるように
信頼できる主治医を探して下さい。
糖尿病で怖いのは、サイレントキラーと呼ばれるほど、自覚症状なく進行する合併症じゃ。自分の身体の状態は常に把握しておかねばらなんな
インスリンを怖がって治療を後回しにしたら大変なことになるよ。お医者さんに相談して適切な使用法をすればインスリンは怖くない!最善の治療を行おう!
最後までお読みいただきありがとうございました。