「発達障害」
令和となった今、この言葉を聞いたことがないという方は
ほとんどいないのではないでしょうか。
一方、昭和生まれの世代の人たちは
「私たちの頃はこんなにいなかったよね」
と思ってしまうのではないでしょうか。
発達障害とは一言で言い表せず多岐にわたり、
今回は発達障害について詳しく解説させていただきます。
発達障害とは?
発達障害とは生まれつきの特性で「病気」とは異なります。
また、親の育て方の問題や本人の努力が足りないのではなく、
生まれつきの脳機能の一部にある障害が原因であるとされています。
発達障害はいくつかのタイプに分類されており、
- 自閉症
- アスペルガー症候群
- 注意欠如・多動性障害(ADHD)
- 学習障害
- チック障害
- 吃音(症)
などが含まれます。
※発達障害情報・支援センターHPより引用
そして発達障害の代表的なものとしては以下3種があります。
- ASD
自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群・広汎性発達障害もこの枠に含む - ADHD
注意欠如多動性障害 - LD
学習障害
一人が複数の発達障害の特徴をもっていることもあり、
知的な遅れを併発する人もいます。
それでは一つずつ見ていきましょう。
ASD(自閉症スペクトラム。アスペルガー症候群、広汎性発達障害を含む)
自閉症スペクトラム Austism Spectrum Disorder:ASD
まず、発達障害を語るうえで自閉症スペクトラムについての説明は必須です。
現在の国際的診断基準の診断カテゴリーである
広汎性発達障害(PDD)とほぼ同じグループを指しており、
- 自閉症
- アスペルガー症候群
- そのほかの広汎性発達障害
が含まれます。
症状の強さに従って、いくつかの診断名に分類されますが、
本質的には同じ1つの障害単位だと考えられています。
以前は、自閉症の特性として、典型的な自閉症に加え、
特性の目立ち方や言葉の遅れの有無などによって
- アスペルガー症候群
- 特定不能の広汎性発達障害
などに分けられていました。
典型的な「自閉症」は、
- 言葉の発達の遅れ
- 相互的なコミュニケーションをとるのが難しい
「アスペルガー症候群」では
- 言葉の遅れがない
- 比較的コミュニケーションが取りやすい
という特徴があります。
しかし、前述したように複数の特徴を併発していることが多く、
共通している特徴は
- 対人関係が難しい
- だわりが強い
なども多いので、それらが連なっているというとらえ方で
スペクトラム(スペクトラムとは「連続体」の意味)と表現をしています。
ASDの主な症状と特徴として、
- コミュニケーションが苦手
・表情などから相手の気持ちなどを読み取ることが苦手
・比喩や冗談が伝わりにくい - 人と社会的かかわりを持つことが苦手
・グループでの活動が苦手
・やり取りがうまくかみ合わない
・伝えたいことを言葉にまとめることが難しい
- 興味や関心が限定的(こだわりが強い)
・人の話に関心を持てない
・自己流で物事を進めたがる
・特定のものにしか興味をしめさない
などが挙げられます。
ADHD(注意欠如・多動性障害)
注意欠如・多動性障害 Attention-Deficit hyperactivity disorder:ADHD
かつては注意欠陥多動性障害と呼ばれていたのですが、
『欠陥』という表現が偏見を生むことがあるため、
現在は注意欠如・多動性障害と表現されています。
実際の発達年齢に見合わない、
- 多動‐衝動性
- 不注意
またはその両方の症状が、7歳くらいまでに現れます。
学童期の子どもには3~7%存在し、男性は女性より数倍多いと報告されています。
男性の有病率は青年期には低くなりますが、
女性の有病率は年齢を重ねても変化しないと報告されています。
精神障害の診断と統計マニュアル
(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Dissorders:DSM)という
世界的に用いられている精神障害の分類のための共通言語と
標準的な基準を提示するものがあります。
こちらのDSM-Ⅳでは「注意欠如・多動性障害」として、
以下の3つに分類されています。
- 不注意優勢型
- 衝動性優勢型(多動性)
- 混合型(不注意と多動性-衝動性の両方とも該当)
また、もう一つ国際基準として扱われるものに疾病及び関連保健問題の国際統計分類
(International Statistical Classification of Diseases anda Related Jealth Problems:ICD)
があります。
ICD-10では「多動性障害」として、次の3つに分類されています。
- 不注意
- 過活動
- 衝動性
どちらも不注意・過活動・衝動性・またはその両方を併発することが
挙げられています。
ADDという言葉を聞いたことがある方もいるでしょう。
ADDは日本では
「注意欠陥障害(Attention Deficit Disorder with and without Hyperactivity)」
と訳され、現在ではADHDと呼ばれている発達障害のかつての診断名で、
ADDという表現は世界的にみると1980年代ごろの診断名なのです。
つまり、かつてADDと診断された症状は、
現在、ADHDの「不注意優勢型」に分類されます。
ADHDの主な症状と特徴として、
不注意
- 集中や注意の配分がうまくできない
・細かい注意を払うことができない
・好きなことへ過剰に集中する - 間違いややり残しのミスが多い
片付けが苦手
忘れ物やなくしものが多い
決められた時間を守れない
多動性
- 落ち着きがない
状況と無関係に動き回る
おしゃべりが止まらない
みんなが座っているときに席を立ってしまう - ソワソワと手足を動かしたり、座っていてもモジモジ動いたりしてしまう
衝動性
- 目についたこと、思いついたこと、沸いた勘定などに対して、反応を抑えることができず、衝動的に行動してしまう
相手の話をよく聞かずに話し始める
順番を考えずにこうどうしてしまう
興味があるものをすぐ触ってしまう
順序立てて課題を進めることが難しい
などが挙げられます。
LD(学習障害)
またの名を限局性学習症といいます。
LDには
- 教育的な立場でのLD(Learning Disavilities)
- 医学的な立場でのLD(Learning Disorders)
の2つの考え方があります。
最近は一般的な学習方法と異なった学習アプローチをとるという点から、
Learning Differences(学び方の違い)と呼ぶ人もいます。
Dの意味がそれぞれの立場から見て異なるのですが、
どの場合でも対象者は学習することに難しさを感じており、
助けを必要としていることは変わりありません。
教育では「Lerning Disavilities」
LDの子の困難さを能力的に学習しにくい状態と捉えるため、
「Disavilities(障碍者)」という言葉が用いられています。
文部科学省はLDを以下のように定義しています。
- 全般的な知的発達に遅れはない。
- 聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す。
- 障害の原因として、中枢神経に何らかの機能障害が推定される。
- 視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害が直接の原因ではない。
- 環境的な要因によるものではない。
医療では「Learning Disorders」
LDの子の困難を機能的な障害と捉えるため、
「Disorders(障害)」の語が使われます。
DSM-Ⅳでは、LDの特徴として、
- 読むことの難しさ
不的確で遅い、意味が理解できない - 書くことの難しさ
字を正しく書けない、考えを書き出せない - 計算の困難さ
数の概念や計算、数学的な推論が身につきにくい
といったケースを示しています。
また、
- 年齢相応の発達が見受けられないこと
- 生活上の支障があること
- 困難が学齢期に始まること
- 他の障害や環境的な要因では説明できないこと
などもLDの定義のなかで示されています。
発達障害とは?手帳とは?
発達障害の主な分類についてみてきましたが、いかがでしたでしょうか。
では、発達障害を対外的に証明するものはなにかあるのでしょうか。
発達障害の人も「社会的な制約」があれば障害者手帳を申請・取得できます。
「うつ」などの二次障害がないと受け入れられないことが過去にはあったものの、
国の方針が明確になった2010年ごろから
二次障害がなくても発達障害の方の障害者手帳取得が急激に増えています。
発達障害者支援法(平成16年法律第167号)
(定義)
第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。
2 この法律において「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。
文部科学省により2012年に
全国の公立小中学校で約5万人を対象にした調査結果で、
”発達障害の可能性のある”とされた児童生徒の割合は6.5%。
これは一クラス40人学級として考えると、
一クラスに2~3人の児童生徒が発達障害の可能性があるという割合になります。
ただし、このデータは一般的に通常学級と呼ばれている学級に通う
児童生徒を被験者としているため、
支援学校・支援学級に通っている児童生徒を除いたデータということになります。
すなわち、発達障害の可能性のある児童生徒の割合はもっと多い可能性があるということです。
可能性のある子すべてが手帳を取得しているということではありません。
しかし、次の条件に当たれば手帳を取得できます。
- 「身体障害者手帳」の対象者
・視覚障害
・聴覚障害
・肢体不自由
・心臓、腎臓などの機能障害
・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害 など - 「療育手帳」の対象者
知的指数が一定基準以下であって、次のいずれかに該当
・食事、着脱衣、排便および洗面など日常生活の解除を必要とする
・異食、興奮などの問題行動を有する
知的指数が一定基準以下で、盲、ろうあ、肢体不自由などを有する など
- 「精神障害者保健福祉手帳」の対象者
・統合失調症
・うつ、そううつ病などの気分障害
・てんかん
・高次脳機能障害
・発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害など)
・その他の精神疾患 など
(引用:厚生労働省ホームページ)
厚生労働省が平成28年に在宅の障碍児・者へ行った、
生活のしづらさなどに関する調査によると、
医師から発達障害と診断された者の数は、推計48万1千人。
このうちの何人が発達障害を主な理由として
手帳を取得しているかは定かではないのですが、
障害者手帳所持者の割合は76.5%という調査結果が発表されています。
- 療育手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
を持つことにより、公的機関の手助けが受けやすくなります。
- 保育、教育面の援助
- 自治体によっては保育園への入園に際して、優先順位が高くなる
- 特別支援学校への入学希望の際、手帳の写しが必要になることがある
- 就労に向けての援助
- 障害者雇用枠での就労が可能になる
- 就職後、職場に配慮してもらいやすい
- さまざまなサービスや割引・給付が受けられる
- 公共交通機関の割引
- 各種料金の割引減免(有料道路、携帯電話の割引など)
- 各種施設のサービス割引
- 給付・税の減免や控除
- 手当の給付
などがありますが、受けられるサービスは手帳の種類や自治体により異なるので、
具体的にはお住まいの自治体へお問い合わせください。
発達障害とは?チェックリストをご紹介
特徴や取得できる手帳の種類についてみてきましたが、
ではどのようにチェックすればいいのでしょうか。
以下は「3歳児に、こんな症状があったら発達障害かも」という
行動や症状のチェックリストです。
- 人見知りがひどい
- 癇癪を起こすことが非常に多い
- 新しい場所や人を極端に嫌がる・不安がる傾向がある
- 気に入らないことがあると、すぐに手が出てしまう
- 同じくらいの年齢の子どもと遊べない
- 急に思いたったような行動が多い
- ごっこ遊びをしない(お店屋さんごっこ、おままごとなど)
- 聞かれたことに答えられないことが多い
- 会話が成り立たない
- 言葉が遅れている
- 気に入った遊びだけを続ける など
4、5個以上当てはまり、保護者の方も不安がある場合は、
一度専門家に相談をしてもよいでしょう。
※しかし、当てはまることがあっても、必ずしも発達障害だとは言い切れません。活発な子だねという診断であることも、おとなしい性格だねという診断であることもあります。
- 相談の電話からという入り方をする人
- 各自治体で行われる3歳児検診で相談をしたことから入る人
- 直接療育センターへ相談へ赴く人
など、本当に人それぞれです。
発達障害とは?手帳とは?種類や特徴、診断チェックリストをご紹介 まとめ
いかがでしたでしょうか。
今、様々なところで耳にするものの誰もが理解はふわっとしてる発達障害について、
少しでも輪郭が見えてきたのでは?
発達障害が気になるのが自分自身のことであるにせよ、
自身の子どものことが気になるにせよ、
大切なのは一人で抱え込まないことです。
インターネットにはたくさんの情報があふれており、
不安に駆られることもあるかと思いますので、
気になる場合には専門機関への相談をお勧めします。
あくまでも特徴・個性であるということを皆が理解し、
協力し合える人にやさしい社会になるといいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。