あなたは2019年4月。東京の池袋で高齢ドライバーが次々に歩行者をはねてしまい、
母子2人が死亡、10人が負傷した悲痛な事件を覚えているでしょうか。
当時はニュースでも高齢者の「暴走運転」として大きく取り上げられ、
ドライバーの厳罰を求める署名活動が行われるなど、社会現象にもなりました。
運転していた高齢ドライバーは87歳、75歳以上に義務付けられている「認知機能検査」で
「機能低下の恐れなし」と判定され、ゴールド免許も保有していました。
高齢化が進む日本において、70歳や80歳でも「現役で運転している」というドライバーは非常に多いのが現状です。
そもそも、問題となる「高齢ドライバー」とは何歳以上を指すのでしょうか。
また、何歳から事故率が上昇してしまうのでしょうか。
今回は世界有数の高齢化社会である我が国における高齢ドライバーの現状とその事故率について考察していきましょう。
高齢ドライバーとは何歳から?どのように決める?
毎週のように高齢ドライバーによる痛ましい事故が起こるたびに、
高齢者による運転の是非が問われています。
そこで問題となるのが「高齢ドライバーとは何歳からを指すのか」ということ。
現在、車を運転できる上限年齢に法律の定めはなく、
具体的に何歳まで運転するかは個人の裁量にまかされている状態です。
同じように「何歳から高齢ドライバーとするか」の判断材料も法律上明確ではないのですが、
「警察庁の交通事故統計」や「損害保険料率算出機構の資料」では、目安として「65歳以上」を高齢ドライバーと定義しています。
しかし、読者の方も察していると思いますが、多くの人は自分の老いを認めたくない傾向があり、
「自分はまだまだ若い」
「普通で65歳?じゃあ私は70歳くらいまでは余裕だね。だって若く見られてるし」
と、自分に甘いの補正をかけてしまいます。
高齢ドライバーの事故リスクはどれくらい?
では高齢ドライバーを65歳と定義したとき、その他の年齢層と比べ、事故リスクはどれくらい違ってくるのかを見てみましょう。
実際の「交通事故件数」を比較してみると、事故を起こしたのが最も多かった年齢層は「16~19歳」です。
人によっては意外に感じられるかもしれませんが、次いで多かったのは「20~24歳」。
この結果だけを見ると「え?高齢者よりも若者の運転の方が問題では?」といえるでしょう。
しかし、ここで注意しなければならないのは「死亡事故の件数」で比較した場合。
年齢層別で見ると「80歳以上」のドライバーの事故率がぐっと高くなり最多に、
次いで「16~19歳」「70~79歳」と続いています。
つまり、高齢ドライバーの交通事故件数は、他年齢と比べ突出して多くないのにかかわらず、
いったん事故を起こすと大惨事となるような痛ましい結果になる可能性が高いといえるのです。
高齢ドライバーが事故を起こさないための対策とは?
高齢ドライバーの事故を減らすための対策として、
現在は70歳以上のドライバーに「高齢者マーク(高齢運転者標識)」をつけるよう呼びかけています。
しかし「高齢者マーク」を車につけるのはあくまで「努力義務」のため、
特に車をファッションととらえている方には
「高齢者マーク?こんなダサいのつけて走れるかい!」
とつけていない方もいます。
そして、もしマークをつけないまま運転したとしても、基本的に大きな罰則がないのが現状です。
また、70歳以上のドライバーは免許更新時に「高齢者講習の受講」、
75歳以上では「認知機能検査」と「高齢者講習の受講」の両方が必要となっていますが、
前述したように、検査と受講を終えたドライバーでも事故を起こしているという事例から、
この対策だけで十分安心できるとは言い難いでしょう。
高齢ドライバーが事故を起こす原因とは?
75歳以上の高齢ドライバーによる事故の34%は「ブレーキの踏み間違いやハンドルの操作ミス」という分析結果があります。
これは75歳未満の3倍の数字です。
頻繁に運転している場合でも、本人が気づかないうちに、加齢により身体能力が低下していたり、
認知機能が衰えていたりする可能性があるのは明白。
運転中、とっさに反応できず、的確な判断をしそこねる場合もあるでしょう。
また、長く運転している高齢ドライバーこそ「慣れ」や「自信」が危険な運転につながるかもしれません。
高齢ドライバーはいつまで運転できる?本人まかせ?
高齢ドライバーによる死亡事故がニュースになるたびに「そろそろ親の運転をやめさせたい」「免許を返納させたい」という声が上がります。
そもそも運転できる年齢に上限がないため、いつまで車の運転をするかは、自身や家族間でしっかり検討することが大切です。
実際、親に免許を返納してほしいけれど「返納できない状況」にあるという声も。
過疎地に住んでいる場合は「毎日の買い物で車が必要」、足腰が弱くなっている場合は「重い荷物を運ぶのに車が必要」など、返納できない事情はそれぞれです。
また、国立長寿医療研究センターの調べでは、運転をやめた人が要介護状態になる危険性は運転を続けている人の約8倍に及んだという結果もあります。
安全に運転できる高齢ドライバーと、そうでないドライバーを一律に考え、運転をやめさせたり、免許を返納させたりするのはよくないという専門家もいるのです。
高齢ドライバーには「安全運転できるような教習を常に行うこと」また、「運転アシストのついた車を積極的に取り入れること」など、多方面からの対策が必要といえるでしょう。
高齢ドライバーとは何歳から?どれくらい事故率が上昇するのか考察 おわりに
いかがでしたでしょうか。65歳から「高齢ドライバー」と呼ばれる日本。
高齢化が進む一方で、車の運転をしなくてもいいような公共交通機関の整備やシステム構築は十分とはいえない状況です。
運転するということは、加害者にも被害者にもなってしまう可能性があるということ。
いつまで運転するかについて高齢ドライバーの家族や友人がリスクを諭して話し合いをすることはもちろん、国や自治体が一丸となって、死亡事故を防止するような制度をつくっていくことが大切です。
少しでも悲しい交通事故を減らしていけるよう一人一人が他者に思いやりを持っていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。