新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の世界的な流行に伴い、『全自動PCR検査システム』という言葉が身近に聞かれるようになりました。
現在、PCR検査システムは有資格者による手作業で行われており、1日に検査できる検体の数は限られているため、コロナと疑われる症状があっても、なかなか検査を受けることができないのが実情です。
この人手不足は深刻な問題で、収まりつつある第1波より毒性の強いとされる第2波、第3波の襲来により医療崩壊へつながるおそれもあります。
そこで、現在注目されているのが、全自動PCR検査システムです。
実は、全自動PCR検査システムは、日本の千葉県松戸市にある企業とフランスとの共同開発によって生み出されたものなのです。
全自動というだけあって一気に検査ができそうな響きですが、この記事では、「全自動PCR検査システムとは?」という疑問や、日本の企業とフランスの関係について、詳しくご紹介していきたいと思います。
PCR検査システムとは?
PCR検査システムとは、現在ウイルスが身体の中に存在しているのかを調べることができる検査システムのことです。
鼻の奥をぬぐった粘液や気道の奥から排出される痰を摂取し、検査することで、コロナウイルス感染症に感染しているかどうかがわかる、という仕組みです。
ウイルスには、ヘルペスウイルスやB型肝炎ウイルスのような”DNAウイルス”と、インフルエンザウイルスやノロウイルスなどの”RNAウイルス”に分かれています。
新型コロナウイルスは”RNAウイルス”で、このRNAウイルスはとても不安定な物質だと言われています。
そのため、RNAウイルスを調べるためのPCR検査では、まずRNAをDNAに変換する、という作業が必要なのです。
そのため、PCR検査で陰性か陽性を判断する過程においては、多くの時間を要することになります。
全自動PCR検査システムとは?
千葉県松戸市にある、東証マザーズ上場の「プレシジョン・システム・サイエンス」(PSS社)では、研究機関や病院で行われている手作業のPCR検査について、より早く性格に判断できる、全自動PCR検査システムの開発が進んでいます。
手作業のPCR検査は、その工程が非常に複雑で、約6時間で1つの検体しか検査できないという状況です。
しかし、全自動PCR検査システムを導入することで、その時間を大幅にカットすることができ、わずか2時間で8つの検体を検査することが可能です。
コロナによる医療崩壊が懸念されている中、全自動PCR検査システムを導入することで、検査数を増やすことができますよね。
また、全自動PCR検査システムを導入することで、手作業でのミスを防ぐこともできます。
手作業のミスを防ぐことにより、偽陽性となった人が院内の医療従事者の方への感染させてしまうリスクを減らす効果が期待できるのです。
日本で作ったのに全自動PCR検査システムは導入が遅れている?
既に世界各国では全自動PCR検査システムの導入が進んでいますが、日本では他の諸国に比べると、全自動PCR検査システムの遅れが指摘されています。
政府は「早急に強化する」を発言していましたが、実際にはまだまだ対応が遅れているという現状です。
日本では諸外国に比べ、コロナによる重篤患者が少ない、といわれています。
また、PSS社はかねてより全自動PCR検査システムの製造を行ってきましたが、日本で全自動PCR検査システムを導入するには、複雑な行政手続きが必要となります。
そのため、日本国内での全自動PCR検査システム認可には、最低でも1年はかかるそうです。
安全な機器を提供するため、慎重な手続きが必要なのもわかりますが、国民の安心や医療従事者の方々の安全のためにも、一刻も早い認可が求められています。
全自動PCR検査システムはフランスでどう使用されている?
前述した千葉県松戸市のPSS社は、フランスのエテリック社と全自動PCR検査システムを共同開発しました。
フランスではコロナによる死者が2万6000人を超え、国内全土で外出禁止令が出されています。
この外出禁止令により、人々が外出できるのは食糧品の買い出し、医師による受診、仕事(絶対に在宅勤務ができない職種のみ)、犬の散歩、という限られた場合のみです。
外出には証明書が必要で、証明書を持たずに外出する人には罰金が科せられます。
それほど深刻な状況にあるフランスの医療現場では、全自動PCR検査システムが多いに役立っています。
また、PSS社はフランスに対し、全自動PCR検査システムだけではなく、抽出試薬や付属の消耗品も供給しています。
このことにより、PSS社はフランス駐日大使ローラン・ピック氏から感謝状を受け取ったそうです。
フランスだけではなく、コロナによって多くの死者を出したイタリアも、全自動PCR検査システムを導入しています。
その他、アメリカやドイツなど、世界各国で、全自動PCR検査システムが活躍しています。
世界の多くの国で導入されている全自動PCR検査システムを支えているのは、日本の技術だと言えるでしょう。
全自動 PCR 検査システムとは?日本が作ってフランスでは使われている? おわりに
いかがでしたでしょうか。
この記事では、全自動PCR検査システムについてのご紹介や、日本で作られた全自動PCR検査システムが、フランスで作られていることについて、詳しく調べてみました。
日本の技術が、世界各国に大きな貢献をしているということは、同じ日本人としてとても喜ばしいことですが、自国で使えないのはもどかしさを感じますよね。
2020年6月12日に東京アラートも解除されたばかりですが、私達一人一人がうがい、手洗いなど外出時に気を付けてワクチンが開発されるまで感染者を少なく抑えることが肝要となってきます。
人類とウィルスの長い戦いは持久戦となりますが、一刻も早く新型コロナウイルス感染症が収束し、世界中の人々が安心できる日が戻ってくるのを願い、前向きに過ごしていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。