今年2020年に最も報じられている2大ニュースの一つが新型コロナウィルス、
もう一つがアメリカの「反人種差別デモ」についてではないでしょうか。
現在でも反人種差別デモは一部暴動・略奪に発展し、世界各地で広がりを見せています。
きっかけとなったのは、2020年5月25日。
アメリカのミネソタ州で黒人男性が白人警官に8分以上も首を圧迫され、窒息死した事件でした。
押さえつけられ、明らかに抵抗の意思がない黒人男性が
「息が苦しい」
と、苦悶の表情で訴える姿がSNSに投稿されると瞬く間に世界中に広がり、
火がついたように全米各地で「人種差別」を訴えるデモが始まりました。
一国の大統領なら、こういったとき、どのように振る舞えばよいでしょうか。
恐らく前オバマ大統領であれば、死亡した黒人男性をいたわり
「我々は二度とこのような悲劇を起こさないよう迅速に厳しい対策を講じていく」
などと訴えていたのではないでしょうか。
トランプ米大統領も初動捜査の時点で
「非常にひどいことだ。司法長官やFBIが調べている」
と遺憾の意を示すコメントを発表していました。
しかし、その後デモが一部暴徒化し、街を破壊するような行動をとり始めると一転、
「略奪が始まれば、銃撃を始める」
とSNSに投稿し、強い姿勢と言葉で、暴徒化する「反人種差別デモ」を制圧しようとしました。
どちらも真意なのだと思いますが結果として、その後から現在に至るまで、トランプ氏と、彼を「人種差別者」として非難する市民らとの溝は深まるばかり。
この新型コロナウィルスで全米が一つになって協力しないといけない大切な時期にです。
しかし、トランプ氏の発言が問題視され、連日メディアで取り上げられるのは、今に始まったことではありません。
今回は米国の闇ともいわれる「人種差別問題」について、トランプ政権誕生前後のトランプ氏の「人種差別発言」から考察していきます。
トランプ氏の物議を醸した発言1「不法移民の脚を撃て」
トランプ氏の人種差別発言を語るにあたり外せないのは、アメリカで後を絶たない不法移民問題の際の発言です。
2016年の大統領選で、トランプ氏は約3200キロメートルあるメキシコとの国境に
「大統領になったらあそこに壁を作る」
と公約し、世界中のメディアから注目されました。
「不法移民の脚を撃て」とは、トランプ氏が側近に提案したと報道されたものですが、
当時いったいメキシコ国境で何が起きていたのでしょうか。
メキシコ国境から不法入国、増える移民に混乱するアメリカ国民も
トランプ政権以前のアメリカの制度では、どのような入国方法であっても「難民申請」さえすれば、すぐに強制送還はされず、滞在期間中に働き口を探すこともできる傾向がありました。(ある意味人種差別がない状態といえました。)
そのため、経済的に苦しいメキシコや中南米から、次々に人々が国境の柵を越え、アメリカに押し寄せてきている状況でした。
子ども連れ、家族連れで、命を懸けて国境の川を渡ってくる人も少なくありません。
しかし、施設で収容しきれないほどの移民が街中に溢れ、仕事もない、そうなると犯罪に走る移民も増えてきます。
もともとその付近に住んでいたアメリカ国民はどのように感じるでしょうか。
もし、あなたが今住んでいる家の近くにそんな人達が押し寄せてきたらどう思いますか?
それでも、人道的立場から支援したいという国民もいれば、
「安い賃金で彼らに仕事を奪われるのではないか」
「怖い、家族を守るために治安が心配」
など、不安を隠せないアメリカ国民が増えていたのも事実です。
トランプ氏の物議を醸した発言2「メキシコが強姦犯や麻薬密売人を米国に送り込んでいる」
2016年の大統領選で、トランプ氏は不法移民を「強姦犯や麻薬密売人」と揶揄(やゆ)して大問題となりました。
連日その「暴言」はメディアに取り上げられ、多くの人に非難されるも、結果は当選。
「国境に壁とは人種差別だ!」
とトランプ氏に反発がある一方で、
実際に国境付近に住むアメリカ国民からの
「そんなの近くに住んでない奴等の綺麗事だ!よく言ってくれたトランプ!」
と、不法移民に強い対策を望む声が大きかったといえるでしょう。
2019年のトランプ政権下では、アメリカで難民申請をした場合でも、必ずメキシコで待機するような規則に変わりました。
移民がアメリカを目指す主な理由を考えると、根本的解決にはほど遠い施策といえるかもしれません。
今後、貧困国をどのように支援していくか。これは、アメリカだけの問題ではなく世界全体の課題と考えるべきでしょう。
トランプ氏の物議を醸した発言3「新型コロナは中国ウイルス。ウイルスは中国からきたのだから」
新型コロナウイルスの呼称をめぐっても、トランプ氏は「中国ウィルス」と呼んでおり、国連やメディアなどから「人種差別発言をしている」と、強く批判されてきました。
当のトランプ氏は
「中国で発生したウイルスだから中国ウイルスだ。人種差別とはまったく違う」
と正論を主張。くわえて
「ウイルス流行について、アジア系アメリカ人は責められるべきではない。彼らはすばらしい人々だ」
ともはっきり述べています。
しかしながら、名指しを受けたかたちの中国側は面白いはずがありません。
「中国ウイルス」と呼称することそのものが侮辱的であり「人種差別」につながるのだと強く訴え、逆にアメリカ軍が持ち込んだ説まで展開しはじめました。
歴史的には「スペイン風邪」や「中東呼吸器症候群(MERS)」のように、発生した地域の名がついた感染症もあるようですが、
WHOは今回、新型コロナウイルスの呼称をいかなる国とも関連付けない「COVID-19」と決定。
新型コロナウイルスの「発生源」という観点から見れば、実はまだどの国も明確な情報をつかんでいない状況です。
トランプ政権では、新型コロナウイルスは「中国の武漢研究所から発生した」との見解ですが、中国側はこれを否定しています。
「特定の動物からではないか」「市場からではないか」など、さまざまな憶測が飛び交っている状態です。
日本政府からもWHOに発生源の検証を要請してはいますが、いまだに詳細不明ということですから、中国とアメリカのウイルスをめぐる争いは、まだまだ続くのではないでしょうか。
いずれにせよ、世界が一つにならないとならない時期ですので、発言に十分注意しなければならないことは間違いありません。
トランプ政権で生じた人種差別問題について トランプ氏の問題発言から考察 おわりに
いかがでしたでしょうか。
過去数年を振り返ってみても、トランプ氏の「問題発言」は多岐にわたり枚挙にいとまがありません。
これだけ世界のメディアから批判を浴びていても、トランプ氏の強気な姿勢は一貫して変わりません。
2020年6月の時点でも
「物言わぬ多数派は、かつてなく強くなっている」
と、自身の支持層が盤石であることを強調しています。
トランプ氏の側近は「過激な発言を控えてほしい」と忠告しているようですが、
本人はほとんど聞く耳を持たないとも報道されていました。
トランプ氏が強気な理由の一つとして、大統領としての給与を年収1円しか受け取っていない背景もあり、
そもそもトランプ氏はやり手の不動産王で2005年の年収が1億5千万ドル(約170億円)とされいるので、
正直、失言しても世界中の誰にも媚びたり謝る必要がないのです。
それでも、彼の発言は「人種差別」なのか、それとも一定数のアメリカ国民を「守るための発言」なのか、
賛否両論あることは間違いありません。
しかし、世界中で人種差別を撤廃していく方向での教育が進んでいく中で、
アメリカの大統領が人種差別の呼び水となってしまう発言をし続けることは子供たちの教育にとっても良くないことは確かです。
せっかく親が「人種差別は駄目だよ」と子供に教えても、子供が
「だってトランプ大統領がメキシコ人に気を付けろって言ってたんだ」
なんて返されたら何も言えなくなってしまいますよね。
トランプ氏は2020年6月28日にも、ツイッターで白人至上主義者のスローガンの一つ「ホワイトパワー(白人の力)」と発言した動画投稿をリツイートして「また人種差別を助長した!」と批判され、その後直ちにリツイートが削除されていました。
(ホワイトハウスは「動画の中の発言を未確認だった」と釈明していますが、発言を確認せずリツイートしたかの真偽は確認しようがありません。。)
次の米大統領選挙は2020年11月に行われますが、「暴言」の多いトランプ氏は、はたして再選できるのでしょうか。
アメリカ国民の「選択」に注目が集まります。
最後までお読みいただきありがとうございました。