あなたは週にどれくらい運動していますか?
学生さんで部活動をしている方はほぼ毎日でしょう。
社会人でも健康のために週3日くらいジムに通われている方もいらっしゃいますよね。
今は野球、サッカー、ボクシング、ゴルフなど、
あらゆるジャンルのプロスポーツ選手がYouTubeやSNSで
トレーニング動画をアップしており、手軽に学ぶことができるようになりました。
一方、プロアスリートの圧倒的な運動能力を目にすると、
「自分の運動能力はどれくらいなのか」
と興味を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は今の時代、「運動能力遺伝子」を検査することで、
客観的にご自身の運動能力を知ることができるのをご存知でしょうか。
今回は、「運動能力遺伝子」とは何か、その検査方法についてわかりやすくお話していきます。
運動能力遺伝子とは
運動能力遺伝子を一言で説明すると、
「あなたが持っている運動能力の遺伝子のこと」
です。
「じゃあどれくらい持っているの?」
と潜在能力まで気になるところです。
基本的には母親から生まれるので母親と父親の遺伝子を受け継いでいることがわかります。
しかし、近年の研究結果から、科学的には両親からの「遺伝子的要因」が全て、というわけではなく、
「環境的要因」による影響も大きいことが判明しています。
つまり、「遺伝子的要因」がダルビッシュ有と同じだったとしても、
彼を取り巻く練習場やコーチ、チームメイト、ライバルなどの「環境的要因」も揃わないと、
メジャーリーガーではなく、ガタイの良いサラリーマン、もしかしたら書道家だったりしたかもしれないのです。
「遺伝子的要因」と「環境的要因」は複雑に絡み合っていますが、
大まかな割合は「遺伝子的要因」が50%と「環境的要因」が50%とされています。
ただ、運動能力については
66%
が遺伝子的要素で決まっているとされます。
では運動能力に関係する遺伝子にはどんな種類があるのか見ていきましょう。
運動能力遺伝子の種類は?
運動能力には
- 瞬発力や持久力
- 筋肉への栄養・酸素の供給力
- エネルギー生産力
といった3つの代表的な遺伝子があります。
それぞれの遺伝子を把握することで効果的かつ怪我の予防にも考慮したトレーニングメニューを組むことができます。
その中でも筋肉に関わるACTN3という遺伝子について詳しく見ていきましょう。
ACTN3遺伝子とは?
たんぱく質の遺伝子(α-アクチニン3)で、筋たんぱく質同士をつなぎ、速筋の新陳代謝を促します。
細かい筋線維の配列・収縮を維持管理しており、以下の3種類があります。
■速筋(白筋)型(R/R型)
筋線維の割合:速筋が高い
α-アクチニン3の量:最多
適している運動:瞬発系、パワー系
将来的に才能が開花しやすい種目:
- 短距離(走りなら100~400m、水泳なら50~100m)
- 飛ぶ系(高跳び、三段跳びなど)
- 投げ系(砲丸、ハンマー、槍など)
- 重量系(ウェイトリフティングなど)
- 格闘系(レスリング、柔道、相撲など)
■両筋バランス型(R/X型)
筋線維の割合:速筋と遅筋が同程度
α-アクチニン3の量:普通
適している運動:瞬発系、持久系
将来的に才能が開花しやすい種目:
- 中距離(走りなら800~3000m、水泳なら200~400m)
- 球技系(野球、バスケ、サッカー、バレー、テニス、卓球など)
- 格闘系(ボクシング、キックボクシングなど)
■遅筋(赤筋)型(X/X型)
筋線維の割合:遅筋が高い
α-アクチニン3の量:普通
適している運動:持久系
将来的に才能が開花しやすい種目:
- 長距離(走りなら5000~10000m、水泳なら800~1500m、駅伝、ダンスなど)
あなたはどれだと思いますか?
なんだかハンターハンターの能力みたいでワクワクしますよね。
ACE遺伝子
血管を収縮させる物質を生成する役割を持つACEタンパク質の遺伝子で、以下の種類があります。
■血管拡張型(I/I型)
特徴:運動で疲労を感じにくい
酸素や栄養を供給する能力:平均して高い供給が可能
将来的に才能が開花しやすい運動:持久系
■血管拡張/収縮バランス型(I/D型)
特徴:運動で疲労を普通に感じる
酸素や栄養を供給する能力:普通
将来的に才能が開花しやすい運動:持久系
■血管収縮型(D/D型)
特徴:運動で疲労を普通に感じる
酸素や栄養を供給する能力:瞬間的に高い供給が可能
将来的に才能が開花しやすい運動:瞬発系
PPARGC1A遺伝子
P(ペン)P(パイナッポー)A(アッポー)に見えますが、
PPARGC1Aとは、筋肉の内部にあるミトコンドリアをつくり、管理しているPGC-1αの遺伝子です。
PGC-1ααの活性が高いほど運動および消費によりミトコンドリアが増殖します。
ミトコンドリアが増殖することで、エネルギー産生量も高く保持されやすいため
長時間にわたってより多くのエネルギーを必要とする運動に適しています。
ミトコンドリアについては別記事「ミトコンドリアとは?その働きをわかりやすくご説明!」でも特集していますので併せてお読みいただければと思います。
■ミトコンドリア高増殖型(G/G型)
ミトコンドリア増殖能:早い(食事・運動で増えやすい)
エネルギー産生量:高い
長時間の運動:得意
■ミトコンドリア標準増殖型(G/S型)
ミトコンドリア増殖能:普通(食事・運動で増えやすい)
エネルギー産生量:ゆっくり
長時間の運動:まぁまぁ得意
■ミトコンドリア低増殖型(S/S型)
ミトコンドリア増殖能:低い(運動で増やせる)
エネルギー産生量:ゆっくり
長時間の運動:まぁまぁ得意
運動能力遺伝子の歴史
運動能力と遺伝子の関係について、初報告されたのは1988年まで遡ります。
アンテジオテンシン変換酵素遺伝子多型が、ACEの活性に影響したことで、
人の持久力を左右しているといった論文が発表されました。
発表後、解析コストが低下し、運動能力に影響する遺伝子をより深く調べる目的で
ゲノムワイド関連の分析が広がっていきました。
そして、2003年にはオーストラリア、シドニーにあるウエストミード小児病院の研究者が、
ACTN(アクチニン)が筋肉に関係しており、この違いによって運動能力に差がつくという研究を発表しました。
現在も、様々な角度から運動遺伝子の研究がされ、その精度は年々上がってきています。
運動能力遺伝子の検査キットであなたの運動能力をチェック!
運動能力と遺伝子の関係は複雑ですがなかなか興味深いですよね。
特にお子さんを持つ方は
自分の子供にどのくらい運動能力があり、
何に適した潜在能力を持っているのか
把握しておいて、もし何かあった際には対策を講じてあげたいものです。
運動能力遺伝子の検査でわかることは以下4点です。
- 個々が持つ才能や潜在能力
- 自分を知ることで自信につながる
- 親が子への接し方の参考になる
- 子育てや教育の方針を定める際の参考になること
検査方法は痛みもなく簡単で、以下の流れとなります。
- 遺伝子検査キットの中の検査用の綿棒を取り出します。
- 綿棒を口の中に入れます。
- 頬の内側をこすり粘膜を採取します。
- 検査機関へ郵送して結果を待ちます。
シンプルですよね。これはやらないメリットは「お金」と「少しの手間」以外はないのではないでしょうか。
運動能力遺伝子とは?自分はどれくらい?検査キットでチェック! おわりに
いかがでしたでしょうか。
現在はオリンピック選手やプロスポーツ選手だけでなく、学生でも強豪校などでは運動能力遺伝子検査を取り入れて、効果的なトレーニングをしています。
特に、親御さんが子供の運動能力遺伝子の検査をして才能に気づけたり、
「この子は私の子だから運動能力が低くて当たり前」
なんて、自分が運動が苦手だから子供も運動が苦手だろうといった思い込みを客観的に覆せる効果、
今後の怪我の予防を考慮したトレーニングメニューが組めるのも大きいのではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。