あなたは「鶏口(けいこう)となるも牛後(ぎゅうご)となるなかれ」という言葉をご存知ですか?
鶏口とは鶏の口を、
牛後は牛の尻を表し、
小さな組織のトップと大きな組織の末端を意味します。
大企業の末端として働くか、
中小企業のトップになるべく起業するか。
働き方において「鶏口」を選ぶか、
「牛後」を選ぶかはとても重要です。
ねえ、合理天狗くん。『鶏口(けいこう)となるも牛後(ぎゅうご)となるなかれ』ってどういう意味?この間、先輩に言われたんだけれど意味がわからなくて
『鶏口となるも牛後となるなかれ』は卒業を祝うスピーチなどで使われる言葉じゃ。鶏口は鶏の口(小さな組織のトップ)、牛後は牛の尻(大きな組織の末端)を意味する。要するに、大きな組織の末端よりも小さな組織のトップとなるべし、という考えじゃ
えぇ、大きな組織のトップ目指すのもありなんじゃないの?大勢いると難しいから最初から小さな組織のお山の大将を目指すのもなぁ
ふむ、これには深い理由もあるのじゃ。よし今回は『鶏口となるも牛後となるなかれ』の意味について考察してみようかの。併せて由来や類義語、反対語についても紹介するぞ
目次
鶏口となるも牛後となるなかれの意味と由来は?
「鶏口(けいこう)となるも牛後(ぎゅうご)となるなかれ」は、「鶏口牛後」と短縮して用いられることもあることわざです。
「鶏口」は鶏の口を、「牛後」は牛の尻を指します。
鶏の口と牛のお尻?どういう意味?
鶏の口は小さな集団の長の例え。逆に牛の尻は大きな集団に従っている者の例えとして用いられておるのじゃ。つまり『鶏口となるも牛後となるなかれ』は、大きな集団で使われる者ではなく、小さな集団の長になりなさいという意味じゃ
なるほど!大企業の平社員で終わるよりも小さい企業でもいいから自分で起業してみよう!みたいな意味かな
その通りじゃ。大企業や受験などに対して使われることの多いことわざじゃな。大企業に就職すると有能な人も多くなり、それなりに優秀な人でも、ずっと下っ端として働くことになる可能性が高い。それよりも中小企業で自分の実力を最大限に発揮して役職をもらったり大きな仕事を任されたりする方が良いという考え方じゃ
受験もそうだよね!偏差値の高い受験校で成績ビリになるよりも、偏差値そこそこの学校の進学コースでトップを取って推薦入試を受けた方が良い大学に入れることもある。何より精神的にストレスフリーだよね
自分の目的を達成させるために何を選ぶかが大切じゃ
でも、この言葉ってどうして鶏とか牛が出てくるの?由来は何?
『鶏口』は鶏の口(くちばし)で、弱小なものの首長の例えじゃ。『牛後』は牛の尻。強大なものに隷属する者の例えじゃ
へぇ、渋いなぁ
このことわざは元々史記に記された言葉であったそうじゃ。そのむかし中国戦国時代に蘇秦(そしん)という遊説家(ゆうぜいか)がが韓の恵宣王(けいせんおう)に説いたとされておる。意味は強大なものに屈して臣下に成り下がるよりも、例え小さな国であっても一国の王としての権威を保つ方が大事、ということじゃ
巨大な国家に飲み込まれずに一国のプライドを守ろうってことだね。ちなみに遊説家って何?
遊説家とは知識を身につけて諸侯たちに政策を提起する身分の低い庶民のことを言う
へー。蘇秦は一体何を提案したの?
あるとき超大国である秦(しん)は小国6つに対し領地を要求してきた。その際、戦国時代に外交の策士として活動していた蘇秦は韓・魏・秦に魏(ぎ)、趙(ちょう)、燕(えん)、斉(せい)、楚(そ)の六国を説得し、同盟を組むことを提案したのじゃ。その結果、恵宣王は六国の宰相となった。結局この後六国の同盟は消滅し秦に仕えることとなるのじゃが、同盟を組んでから15年の間は、秦が他国を侵略することはなかった
大国に従うのではなく独立国として各国が連合して大国に抵抗したんだね!すごい発想だなぁ!ところで、鶏口となるも牛後となるなかれに似た言葉って何かあるの?
よろしい。では類義語を紹介していこう!
鶏口となるも牛後となるなかれの類義語は?
以下は「鶏口となるも牛後となるなかれ」と似た意味を持つ言葉です。
①「鯛(たい)の尾より鰯(いわし)の頭」
鯛は魚の王様だよ!腐っても鯛って言うじゃない
いくら鯛でも尾は尾。大衆魚の代表である鰯の頭のほうが良いという意味じゃ。いくら立派な鯛(=会社)に付随していても、尾(社員)は鯛(会社)の思惑通りに動くしかない。しかし、貧弱な鰯という会社にあろうとも、頭であれば先頭に立って進むべき方向を決めて指示を出すことができる
大きな組織で他人に指示されることを選ぶか、小さな組織でも自分で率いることを選ぶか。なるほどなぁ。一度しかない人生ならどちらを選ぶかってことだよね
②「大鳥の尾より小鳥の頭」
読み方は『おおとりのおよりことりのかしら』じゃ
どのことわざにも尾と頭が出てくるんだね
下っ端とトップをわかりやすく表現すると『尾』と『頭』になるのじゃな。この言葉の意味は『大きな集団や組織の下っ端よりも、小さな組織のリーダーやトップの方がいい』ということじゃ
こちらも『鶏口となるも牛後となるなかれ』、『鯛の尾より鰯の頭』と同じ意味になるんだね
同じ意味じゃがこの言葉は上の二つよりも使われることが少なくなっておる。ちなみに字の通り『大鳥』が『大きな集団』、『小鳥』が『小さな集団』を表しているぞ
③「芋頭でも頭は頭」
今度は芋の頭?尾っぽは出てこないんだね。そもそも芋に頭も尾もないじゃないか
「芋頭」とは里芋の球茎・親芋のことじゃ。ことわざの読み方は『いもがしらでもかしらはかしら』じゃ。意味は「どんなに小さな集団の長でも、長には変わりはない」ということじゃな
なるほど。たとえ芋であっても頭は頭。集団の頭というのはそれだけ価値があるってことだね
うむ、トップを目指していこう、という考えじゃな
へー。『鶏口となるも牛後となるなかれ』って色々と類義語があるんだね。では、反対語って何になるの?
よかろう。次は反対語を紹介するぞ
鶏口となるも牛後となるなかれの反対語は?
多くの人は「小さい企業でトップとっても大きい企業の平社員より稼げなくて不安定だったら意味ないでしょ」と考えるでしょう。
ここでは『鶏口となるも牛後となるなかれ』の反対語を紹介していきます。
①「寄らば大樹の陰」
『鶏口となるも牛後となるなかれ』の反対語として一番有名なのは『寄らば大樹の陰』じゃな。
聞いたことあるけれど、意味はわからない。教えて!
大きな樹木の陰にいれば、雨や日差しを避けることができて安全じゃ。そのことから、頼りにするなら大きな力をもつものを選ぶべきだということじゃ
なるほど。福利厚生のしっかりした大企業に勤めたい、という気持ちに通じるものがあるね
まさにそれじゃ。『寄らば大樹の陰』では、最初から従属することを前提としており、その上で、従属するならリスクが小さくリターンが大きいと考えられる、強大な集団を選ぶことが賢明と言っておるのじゃ
ローリスクハイリターン……。果たして今のご時世にそんな理想が通じるのか
確かに。大企業だからといって安心していられる時代ではない。いつ買収されて、リストラされるかわからんからな。なので、現代においてはリスクをとることをすすめている『鶏口となるも牛後となるなかれ』という言葉が響いてくるのじゃ
②「犬になるなら大家の犬になれ」
これは何となく意味がわかる。どうせなら金持ちの家で飼われろっていう意味でしょ?その方がおいしい餌が食べられるから!
その通り。『仕えるなら頼りがいのある大物を選ぶべきだ』という意味じゃ。犬になった時にお金持ちに飼われるのとそうでないのでは、大きな違いがあるからな
犬だってたくさん美味しいものが食べたいし、走り回れる大きな家で暮らしてたいよね。環境って大事!選べるものなら選びたい
人間でも環境を選びたいのは同じ。この言葉は『誰かに仕えるのであれば同じ仕えるでも大物の方が良い』という意味を持つ。つまり、仕事をするなら大企業が良いということじゃ
大企業の福利厚生は本当に魅力的だからね
③「長いものには巻かれろ」
こちらのことわざは少し意味合いが変わってくるな。この言葉の意味は『強い権力や勢力を持つ者には敵対せずに従っておいた方がいい』じゃ
つまり大きな組織は敵に回すなということ?
突っ張って強大な勢力を持つものと敵対して負けてしまった本末転倒じゃ。それならば傘下に入って従った方がいい、という処世術としてを表した言い回しじゃ。先程紹介した蘇秦の逸話とは真逆の考えじゃな
うーん。悲しいけれど、この考えも確かに納得できる。だって、最終的には蘇秦の国は超大国に負けてしまったわけだから……。小さな会社ってどうしても大きな会社に飲み込まれてしまうものなのかな?でも、小さな会社だからこそできることだってたくさんあるよね
うむ。ベンチャー精神を忘れずに主体的に生きることは悪いことではないぞ。しかし、大企業だからこそできる予算の大きなプロジェクトもある。どちらが正解というわけでもない。次は鶏口(小企業のトップ)と牛後(大企業の末端)のメリットとデメリットを考えてみよう
鶏口と牛後のメリット・デメリットは?
「鶏口となるも牛後となるなかれ」とは言いますが、「鶏口」にも「牛後」にもメリットがあり、同時にデメリットもあるものです。
それぞれ検証してみましょう。
鶏口のメリット・デメリットは?
鶏口(小さな組織のトップ)は、なんといっても経験値が多くたまる。誰も教えてくれない状態で、やったことのないことをやらなければならない。常に倒産と隣り合わせで最大限の力を発揮し続けて、自分で課題発見をし、学び、解決していかないといけない。これは組織に依存せず自分を追い込むことで、自分の価値を高めやすい環境ではあることは言うまでもない
やること多くてつらそう!
その分タフになれる。ただし、自己流で学んだりすることも多く、学びの効率が悪かったり、正しくない非効率な方法をとり続けてしまう可能性もあるじゃろう。失敗を何度も繰り返す代わりに血肉となっていくのじゃ
自分で考えて全部やらなくちゃいけないのが大変でもあるし、楽しくもあるのかな。やりたいことができるっていう自由さがいいね。少人数のベンチャー起業なら権力争いとかも起こりづらそう
ただ、鶏(中小企業)には牛(大企業)のように大きな体(資本など)がないため、関わる仕事の大きさがどうしても小さくなることが多い。大きな仕事をしたいならば大手企業を目指す方がいいだろう
それと、鶏口でも体調を崩したらおしまいだよね
うむ、選手層が薄いのも鶏口の大きなデメリットの一つじゃろう
牛後のメリット・デメリットは?
牛後のメリットは何と言っても、安心サポートがあることじゃな。牛という大きな組織の頭である優秀な人たちが、学ぶ仕組みや稼ぐ仕組みを考えていて、その仕組みを使えるのじゃ。また、優秀な人の側で働くことでその人のスキルを盗む(学ぶという意味で)こともできる
大きな企業ならある程度の教育システムが確立されていそうだし、安心できるね
一方で、自分ががんばらなくても何とかなってしまうことは成長の妨げにもなる。牛というブランドというだけで成功することも多々あり、自分自身の価値が付きづらい
でも、最初は牛後(大企業の末端)でも、トップの方にランクアップしていくこともできるんじゃない?ライバルは多そうだから大変そうだけれど、ある程度生活が保障された状態で挑戦ができる。それに牛後だと体調を崩しても代わりがいるメリットもあるよ
確かに、鶏口を目指して起業するにせよ、牛(大企業)に所属して優秀な人材のスキルを盗んでから独立するという手もある。おまえのいう通り、選手層が厚く、体調を崩しても代わりがいくらでもいるのは牛後のメリットの一つじゃろう
で、結局鶏口と牛後どっちの方がいいの?
最初に言ったように正解はない。というより、正解は人による、と言うべきか。ただし、情報や社会構造が急速に変化していく昨今では『鶏口』であることが求められていくと思われる。ただ組織に属して言われた通りにしているだけでは生き残れないのじゃ
えー!大企業の方が安泰じゃないの?
安泰なんてものはもはや存在しない。これからは人工知能の時代。言われたことをちゃんとできるだけの人材は人工知能に取って代わられるじゃろう
自発的に行動して、誰もしないことをしないと生き残れないんだね。厳しい!
鶏口(けいこう)となるも牛後(ぎゅうご)となるなかれの意味を考察 おわりに
いかがでしたでしょうか。
鶏口と牛後の例で耳が痛い方もいらっしゃるのでは?
今も昔も、自分で考えて主体的に動ける人材はたった一度の人生を楽しく生きていきます。
言われた事だけやって、誰かの敷いてくれたレールを歩いていくのは安全ですが、
何に対しても「自分だったらどうするか?」を考えて、自分のやり方を確立していった方が、
自分の人生を好きになっていける事は間違いないでしょう。
僕は安定した大企業に入ってさぁ、誰かに言われた通りに適当に仕事やって、ぬくぬくと安泰の生活を送りたいよー
そのような心持ちでは大企業に就職などできんぞ。たとえ入社できても優秀な人材に淘汰されて年下に顎で使われるようになるじゃろう
じゃあ起業しようかなぁ。トップに立って誰かに適当に指示出して、ぬくぬくと安泰の生活を送ろう
・・・
最後までお読みいただきありがとうございました。