人は老化すると様々な病気にかかります。
理由は細胞が老化し、正常に動かなくなっていきます。
分裂を終えて正常に働かなくなった細胞は「老化細胞」と呼ばれます。
それらは人体に蓄積されて組織の老化を促進させていくとされています。
ではこの老化細胞を蓄積させないよう除去できないものでしょうか。
老化細胞は多様性に富んでいることから除去が非常に困難と考えられていました。
しかし、ここ最近の研究で老化細胞を除去する革新的な方法が発表されたのです。
どっこいしょ
合理天狗くん最近老けた?
天狗も老化していくのじゃ
年をとると病気になりやすくなるし、体力も低下していくよね。どうしてだろう?
細胞が分裂する回数は決まっておるからの。分裂を終えて働かなくなった細胞は、そのままにしておくと病気を引き起こすことがあるのじゃ
えぇ!その働くなった細胞って取り除くことはできないの?
できないとされていたが、ここにきて老化細胞は除去できる研究結果が出たのじゃ。今回は東大のグループが発見した老化細胞についての新事実について紹介していくぞ
くぅーやっぱり東大すげぇ!!
老化細胞とは?
まず、老化細胞とは何なのでしょう?
体を構成する細胞は加齢と伴に老化します。
加齢などにより分裂が止まった細胞は正常に働かなくなり、
体の機能の低下や病気を引き起こします。
このような細胞を『老化細胞』と呼びます。
ところで、細胞はどうして老化してしまうの?
まず一つはストレス。あらゆるストレスが原因となって細胞の老化が起こり、細胞の増殖は不可逆的に停止してしまう
えぇ、ストレス社会に属している人は皆当てはまっちゃうよ!
原因は他にもある。もう一つの原因は細胞分裂の限界じゃ
細胞分裂に限界なんてあるの?
ある。元々、動物の体を構成している各細胞は、限られた回数しか分裂・増殖することができないと言われておる
細胞の分裂に限界があるなんて・・そんな法則って誰が発見したの?
この法則はアメリカの科学者『ヘイフリック』が発見したから『ヘイフリックの限界』と呼ばれる
何それ。男塾の技みたいだなぁ
・・・。『ヘイフリックの限界』は細胞が構成する組織や、生物の種類によって変わる
ふーん、人間の細胞分裂の限界はどれくらいなの?
ヒトの胎児から採取した細胞の限界は大体50回。そして、限界まで分裂した細胞こそが『老化細胞』なのじゃ。老化細胞は加齢に伴い体内に蓄積することがわかっておる
老化細胞が蓄積するとどうなるの?
様々な臓器に蓄積した老化細胞は、炎症性物質など、組織の老化を促進する物質(悪性因子)を周囲に分泌することがわかっておる。その現象は細胞老化随伴分泌現象(さいぼうろうかずいはんぶんぴつげんしょう)と呼ばれておるぞ
やっぱり男塾の技みたいだなぁ。悪性因子ってどんなものがあるの?
炎症作用や発がん促進作用を有する炎症性サイトカインやケモカイン、細胞外マトリクス分解酵素などじゃ
うーん、難しくなってきたぞ
老化細胞が増加することで、周囲の組織に慢性炎症や発がんが引き起こされていると考えられておる。さらに悪性因子は他の細胞に作用し、周囲の細胞の細胞老化を誘導したり、場合によっては増殖させたりするのじゃ。
悪性因子って怖いね・・
うむ、免疫細胞を遊走させることで、細胞老化をより強化することも示されている。ちなみに細胞遊走とは細胞などが個体内のある位置から別の位置に移動することを意味する
老化細胞は炎症やがんにつながるんだね!なんとかして取り除けないのかな?
これまで実験により、マウス個体から老化細胞を除去することには成功しておる。除去した結果、加齢に伴うさまざまな症状を改善したり、健康寿命を延ばすことができた。さらには動脈硬化症などの加齢関連疾患の病態が改善することもわかっておる
老化細胞は除去できるなんて人類の英知だね
しかし、生体内に存在する老化細胞は様々じゃ。そのため、広範な老化細胞を標的とした老化細胞除去薬の開発には至っていなかった
老化細胞にも色々あって全ての老化細胞を除去はできないってことか
じゃがしかし!最近の研究で、東京大学のグループが重大な発表をした。老化細胞は『GLS1』というたんぱく質が働かなくなると死滅することが判明したのじゃ
大発見だ!詳しく教えてよ!
GLS1阻害剤について
東京大学医科学研究所(東大医科研)は2021年1月15日、新たな論文を発表しました。
その内容についてご紹介いたします。
東大医科研のグループは老化細胞の純培養法を構築し、老化細胞の生存に必須な遺伝子群をスクリーニングにより探索した。その結果、アミノ酸の一種であるグルタミンの代謝に関与する酵素『グルタミナーゼ1(GLS1))』を同定したのじゃ
スクリーニング?同定?意味不明なんだけど・・・
スクリーニングは医学・薬学・生物学・物理学などの分野において、おおむね『対象を選別する』という意味合いで、よく用いられる言葉じゃ
対象を選別するって言えばいいじゃん。同定は?
・・同定とは、科学全般の用語で、ある対象についてそれが『何であるか』を突き止める行為を指す。簡単に結果だけ言うと、実験によって老化細胞はGLS1というたんぱく質が働かなくなると死滅することを突き止めたということじゃ。グループは年を取ったマウスにGLS1の働きを止める薬を投与した。その結果、マウスの老化細胞は死滅し、血糖値の異常や動脈硬化などの症状が改善することが確認できたという
老化細胞を死滅させる方法を特定できたってことか!老化のメカニズムってまだわかっていないことが多いけれど、一歩前進したね
解析によると老化細胞はリソソーム膜と呼ばれる膜に損傷が生じ、細胞内のpHが低下する(酸性になる)ことで、GLS1の阻害に対する感受性が高まることまで判明しておる
すごい!老化細胞でGLS1を阻害するとどうなるの?
ズバリ!細胞内pHが大きく低下することで細胞死が誘導されるが、逆に、細胞培養液のpHを弱塩基性にすることやアンモニアを過剰添加することでGLS1阻害による細胞死が抑制される
ん?ちょっと待って、さっきのリソソーム膜ってどういう働きをするものなの?
真核生物の細胞小器官の一つじゃ。ちなみに真核生物とは身体を構成する細胞の中に細胞核と呼ばれる細胞小器官を有する生物リソソームの内腔はpH5前後に酸性化されておるぞ。水を加えることで分解する加水分解反応を助ける加水分解酵素を含んでおり、細胞内消化の場と言われておる
わかりにくいなぁー!頭に入ってこないよ!
老化細胞を除去するとどうなるのか
では、GLS1阻害剤により老化細胞を除去したら、肉体にどのような変化が起きるのでしょう。
実験の結果を紹介致します。
マウスにGLS1阻害剤を投与したら、老化細胞が死滅して病状が改善されたんでしょ?どんな病気に効果があるの?
老齢マウスにGLS1阻害剤を投与すると、さまざまな組織・臓器における老化細胞が除去された。加齢関連疾患モデルマウスに対しGLS1阻害剤の効果を検討した結果、効果があったのは以下の通りじゃ
- 肥満性糖尿病
- 動脈硬化症
- 非アルコール性脂肪肝
すごい!色々な病気に効果があるんだ
様々な臓器・組織において老化細胞の除去が確認できたのじゃ。研究成果により、老化細胞の代謝特異性やそれに起因する脆弱性が明らかとなった。加齢性変化の特徴として知られている以下のような症状の改善も可能じゃろう
- 腎臓の糸球体硬化
- 肺の線維化
- 肝臓の炎症細胞浸潤
加齢のせいで起こっていた色々な病気に立ち向かえるんだね!
うむ、老化に伴う筋量低下も防ぐことができる。人は加齢によって運動能力低下や脂肪組織萎縮による代謝異常を生じるが、GLS1阻害剤の投与により、これらの進行も抑制されるのじゃ
健康寿命の増進、筋力の維持、脂肪組織の萎縮を抑制!老人になっても病気にならない健康な体が手に入るかも
さらに現在はGLS1阻害剤はがん治療薬として臨床試験中じゃ。GLS1阻害剤によってがんや動脈硬化を含めた老年病や生活習慣病の予防・治療薬への展開も期待されておる
がんの撲滅は人類の夢だね。GLS1阻害剤は希望の光になりそう!
老化細胞とは?除去できるの?GLS1阻害剤についても解説します おわりに
いかがでしたでしょうか?
人は老化からは逃れられないものと考えられていました。
この度の大きな発見は、加齢が原因で起こる健康の問題への解決の糸口になりそうですよね。
健康で幸福な老後のためにも、老化のメカニズムが明らかになるといいですね。
しかし、この実験はまだマウスで行われたものじゃ。人での実用化を目指し、研究に邁進していってほしいものじゃ
そうかぁ、老化のメカニズムは分かっていないことが多いんだよね。今回の発見で色々なことが分かってくると不老不死も夢じゃないね!
いや、老化細胞を除去しても寿命は変わらん。あくまで健康寿命を延ばせるだけじゃ
えぇ・・残念だぁ。不老不死になりたいなぁ
・・老いることも死ぬことも人間という儚い生き物の美しさだ。老いるからこそ死ぬからこそたまらなく愛おしく・・・
・・ん?待て!どっかで聞いた台詞だぞ!
・・・バレたか
最後までお読みいただきありがとうございました。