あなたはアスベストという言葉をご存知でしょうか?
アスベストは髪の毛よりも細く、耐久性、耐熱性などに優れた奇跡の鉱物で、
用途として多いのは建材などです。
しかし一方で、がんなどの病気の要因となることが判明したことで、
「静かな時限爆弾」と呼ばれるようになってしまいました。
結果としてアスベストは製造を禁止されたものの、これまで使われていたことから、
まだみなさんの身近なところに存在します。
今回は、アスベストの危険性について考えていきます。
ねぇ合理天狗くん、アスベストって知っている?今度、友達が解体工事の現場に入るらしいんだけれど危険なんだって。どう危険なの?
ふむ、かつてアスベストは非常に便利なものじゃった。しかし、様々な病気の原因となることが明らかにされ、その危険性から生産が中止されたのじゃ
ええ?病気になっちゃうの?怖い!しかもがんって・・」
アスベストは使用されなくなったが、古い建物などにまだ残っていて危険じゃ。今回はアスベストを吸い続けるとどのような病気になってしまうのかを考えてみよう!
アスベストとは何か?
アスベストは石綿とも言います。
天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で「せきめん」、「いしわた」と呼ばれています。
アスベストの繊維1本は直径0.002~0.35μm(髪の毛の5000分の1)程度です。
アスベストは、極めて細い繊維で、熱、摩擦、酸やアルカリにも強く、丈夫で変化しにくいという特性を持っておる。そのことから下記の材料として使用されているぞ
・建材(吹き付け材、保温・断熱材、スレート材など)
・摩擦材(自動車のブレーキライニングやブレーキパッドなど)
・シール断熱材(石綿紡織品、ガスケットなど)
色々な工業製品に使用されてきたんだね。それがどうして問題になっってしまったの?どんな病気になってしまうの?
空中に飛散した石綿繊維を長期間大量に吸入すると、肺癌や中皮腫の誘因となることが判明したのじゃ。アスベストはその繊維が極めて細い。そのため、飛散しやすい吹付け石綿などの除去等において所要の措置を行わないと石綿が飛散して人が 吸入してしまうおそれがある。以前はビル工事等で保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われていたのだが、昭和50年に原則禁止されたのじゃ
肺がん以外にもアスベストが原因となってしまう恐ろしい病気はあるぞ。では、次にアスベストを大量に吸うことで発症すると言われている病気について紹介しよう
アスベストによって発症する病気は?
アスベストは、ヒトの髪の毛の直径よりも非常に細く、肉眼では見ることはできません。
そのため、飛散すると空気中に浮遊しやすく、吸入されてヒトの肺胞に沈着しやすいと
いう特徴があります。
肺にくっついて排出されなくなったアスベストによって、様々な病気が引き起こされるのです。
目に見えない細かい繊維が肺にくっつく……。考えただけで息苦しくなってくるよ
吸い込んだアスベストの一部は異物として痰の中に混ざり体外へ排出される。しかし、アスベストは丈夫で変化しにくい性質のため、肺の組織内に長く滞留することになるのじゃ。この体内に滞留したアスベストのせいで、肺が線維化したり、がんの一種である肺がん、悪性中皮腫などの病気を引き起こすことがある
石綿繊維により長期間にわたって炎症が起こることで、組織が傷つけられ続けることで肺が線維化する。また、発生した活性酸素によりDNAが損傷された結果、遺伝子異常が起こり、細胞ががん化する可能性がおる。では、アスベストによって引き起こされる病気をいくつか紹介しよう」
アスベストを吸うことにより発生する疾病としては主に次のものがあります。
①石綿(アスベスト)肺
先程話した肺が線維化してしまう肺線維症(じん肺)という病気の一つじゃ。肺の線維化を起こすものとしてはアスベストのほか、粉じん、薬品等多くの原因があげられるのじゃが、石綿によっておきた肺線維症を特に石綿肺とよんで区別しておる
ひえー。アスベストを吸い続けるとなってしまう病気なの?
職業上アスベスト粉塵(ふんじん)を10年以上吸入した労働者に起こると言われておる。潜伏期間は15~20年といわれておるが、アスベストにさらされるのをめたあとでも進行することがある
②肺がん
アスベストは肺がんを引き起こすと言われておるが、メカニズムはまだ十分に解明されていない。肺細胞に取り込まれた石綿繊維の物理的刺激が主な原因となって肺がんが発生するとされておるぞ
だが、喫煙と深い関係にあることが知られている。アスベストばく露(アスベストにさらされること)から肺がん発症までに15~40年の潜伏期間があり、ばく露量が多いほど肺がんの発生が多いことが知られておるぞ
15年も潜伏期間があったら何が原因かわからんくなってしまいそう。忘れた頃に発症するなんて怖いよ。肺がんってどうやって治療したらいいの?
治療法には外科治療、抗がん剤治療、放射線治療などがあるぞ。肺の調子が悪くなったらまずは診断してもらおう
③悪性中皮腫
肺を取り囲む胸膜、肝臓や胃などの臓器を囲む腹膜、心臓及び大血管の起始部を覆う心膜等にできる悪性の腫瘍(しゅよう)のことじゃ。若い時期にアスベストを吸い込むと、悪性中皮腫になりやすいことが判明しておる
腫瘍か……。アスベストって重い病気を引き起こすんだね
こちらの潜伏期間は20~50年と言われておるぞ。治療法には外科治療、抗がん剤治療、放射線治療などがある
アスベストで引き起こされる病気って重たいね。治療に時間もお金もかかりそう
アスベストで引き起こされた病気は、労働基準監督署の認定を受け、業務上疾病とされると、労災保険で治療できるぞ。まずは相談してみよう
それにしても、アスベストってどれくらい吸うと危険なんだろう?知らない間に吸っているってこともある?
アスベストが使用された古い建物に住み続けていると人体に影響があるかもしれん。また、現在アスベストは使われていないが、過去にアスベストを使用した建物がたくさんある。それらを解体する際、作業員の方は細心の注意を払う必要があるだろう。アスベストは初じん性(飛散のしやすさ)によってレベルが分けられているので、次はそれについて解説しよう
アスベストのレベルは?
現在はアスベストは使用を禁止されていますが、全面禁止になるまでには時間がかかり、
その間にたくさんの建物が建設されました。
今後、それらの建物が解体される際には、どうしてもアスベストが周囲に飛散してしまうため、
作業員だけでなく、周囲の住民にも慎重な作業が求められます。
アスベストは発じん性(飛散のしやすさ)によってレベル1~3に分けられています。
危険性の高いものがレベル1とされ、レベル2、レベル3と続きます。
①レベル1(発じん性が著しく高い)
レベル1に分類されるのは、アスベストと水、セメントを混合したものを吹き付けて使う、吹き付け材などじゃ。これは1956年から1975年頃まで、集合住宅やビルなどでよく使われた。固まると綿のような状態になるぞ。アスベストの濃度が非常に高く、撤去する際に大量に粉末が周囲に飛散するので要注意じゃ
見た目がモコモコしているやつだよね。学校の天井とかで見たことある。他にどんなところで使われているかな?
耐火建築物の梁や柱、エレベーター周辺、ビルの機械室やボイラー室などで使われておるぞ。アスベストの濃度が高く、経年劣化により少しの振動や接触でボロボロと崩れ、飛散する恐れがある。見かけたらなるべく近づかないように
吹き付け材って一般住宅にも使われているの?
木造戸建て住宅にはほぼ使われていないが、ビルの場合は使われているころもある
②レベル2(発じん性が高い)
レベル2に分類されるのは、石綿含有保温材や耐火被覆材、断熱材じゃ。保温目的でボイラーや、ダクトなどの配管の曲がったところ、耐火目的で鉄骨の柱や梁に、断熱目的で煙突や屋根裏に使われているぞ。壁や天井にこびりついているわけではない上に、シート状に巻き付けられているため、レベル1に比べると飛散性は下がる。しかし危険であることには代わりがない
こちらは吹き付けじゃなくて貼り付けする素材なんだね。見たことないけれど、どんな形をしているんだろう?
アスベストの上からシートが巻かれていたり、フェルト状になっておる
それなら飛散しにくそう。でも、シートが破けたりしたら危険だから注意しないとね
こちらも木造戸建て住宅にはほとんど使われていない
③レベル3(発じん性が比較的低い)
レベル3に分類されるのは、アスベストを含んだ成形板で、セメントなどを主な原料としている。レベル1、2と比べて密度が圧倒的に高く、固い板状になっておるぞ
板になっているんだ!割れたりしなければ安全だね
屋根材や壁材として使われていることが多く、ごく稀にお風呂場の壁にも使われていることもあるぞ。木造戸建て住宅で使われている場合もあるので、解体工事の時には注意しないといけない
一般住宅でも使われているのか。屋根材や壁材以外にも使われているの?
・石膏ボード
・ビニル床タイル
・フロアシート(長尺塩ビシート等)
・窯業系サイディング
・住宅屋根用化粧スレート など
アスベスト含有建材ってそこら中に溢れているんだね!
中古住宅などにアスベスト含有建材が使われているか確認したい場合は、建築時の設計図書などを確認するといいぞ。施工した工事業者や建築士に問い合わせしてみよう
解体業者じゃなければアスベストに注意しなくてもいいかと思いきや、けっこう身近なところにアスベストはあるんだね。でも、大量に吸わなければ大丈夫なんだよね?
では、アスベストはどれくらい吸うと危険か考えてみよう!
アスベストはどれくらい吸うと危険?
アスベストはどれくらい吸うと危険なのでしょうか?
厚生労働省のアスベスト(石綿)に関するQ&Aを参照に考えてみましょう。
①アスベストはどれくらい吸うと危険?
で、結局、どの程度の量のアスベストを吸い込んだら発病するの?
それはわらかん。アスベストを吸い込んだ量と中皮腫や肺がんなどの発病との間には相関関係が認められているが、追跡調査も十分ではなく、まだ不明点が多いのじゃ
短期間の低濃度ばく露における発がんの危険性については まだまだ証明できないことが多い。現時点では、どれくらい以上のアスベストを吸えば、中皮腫になるかということは明らかになっておらんのじゃ
②アスベストの検査はどこで行う?
うーん。とにかくアスベストのばく露に注意するしかないのか。でも、知らない間にアスベストを吸い込んでいた可能性があるときは、どこに検査にいけばいいんだろう?
近隣の労災病院等の専門医療機関が良いじゃろう。アスベストを吸い込んだ可能性があり、呼吸困難、咳、胸痛などの症状がある場合はに相談してみよう
③アスベストの検査の内容は?
アスベスト関連疾患の診断で重要な点は、アスベストばく露歴を確認することじゃ。診断では解体工事のバイト歴や家族のアスベストばく露歴を確認していくぞ。しかしながら、アスベスト関連疾患は発症までの潜伏期間が長いことから、アスベストばく露歴が明らかでない場合もある。そのため、胸膜プラークと石綿小体(アスベスト小体)が、アスベストばく露の所見として非常に重要じゃ
石綿を吸入することによって壁側胸膜に生じた限局的な線維性の肥厚のことを『胸膜プラーク』と呼んでおる。また、石綿小体とは、肺内に長期間滞留した石綿繊維の一部がフェリチンなどの鉄たんぱく質で覆われたもののことじゃ
怖すぎ、アスベストをばく露していると、見てわかる体の異常があるんだね
実際に見てもらって診断してもらうのが一番じゃ。とにかく心配ならば労災病院などに向かうのじゃ
④吸い込んだアスベストは除去できる?
ところで、吸い込んだアスベストって完全に除去できるものなのかな?」
残念ながら完全には無理じゃ。一旦吸い込んだアスベストの一部は異物として痰のなかに混ざり、体外に排出される。しかし、大量のアスベストを吸い込んだ場合や大きなアスベストは除去されずに肺内に蓄積されると言われておる
ずっと残り続けるのか。アスベストって怖い
だからこそ、アスベストを避けて生活する必要があるのじゃ
⑤中皮腫や肺がんの発症を予防するにはどうすればよいか?
アスベストによって起こる肺がんなどを予防する方法ってあるの?
過去にアスベストにばく露したことによる中皮腫や肺がんの発症を予防する有効な手段は今のところない。アスベストを吸い込んだ方が全て中皮腫を発症するわけではないし、吸い込んだアスベストの量、期間、種類によって異なる
しかし、肺がんについては、アスベストばく露と喫煙との組み合わせで肺がんの発症は相乗的に上昇するとの報告がある。そのため、禁煙することが重要となっておるぞ
うーん心配が増しただけで何の解決にもなっていない気がする
そんなに心配しすぎるな。アスベストは、少しでも吸ったら必ず病気になるというものではない。実際には、アスベストを吸っても、ほとんどが病気にはならんのじゃ。仕事で長い間たくさん吸った場合でも病気になるのは一部の人で、大切なのは、アスベストをなるべく吸わない生活を送ることじゃな。解体工事や、地震のときはアスベストが拡散しやすいので注意じゃ!
僕はバイトでもアスベストを扱うような仕事はしていないから大丈夫かな。住んでいるところでアスベストが使われいないかだけチェックしてみよう
アスベストとは?どれくらい吸うと危険?レベル別にわかりやすく考察 おわりに
いかがでしたでしょうか。
アスベストが問題になってから何年もたち、自分には関係がないと思っている方が
多い現在。
しかし、かつて建設された建物に使われたアスベストは身近ないたるところに存在しています。
このため、古い家の解体作業時には注意していくようにしましょう。
また、アスベストを使用する仕事を行っていた人は、何年かして肺に異常が出る可能性
がありますので、健康状態には留意しておくようにしましょう。
アスベストって当時は夢のような素材だったみたいだけれど、健康に甚大な被害を及ぼしてしまったのは難しい問題だよね
うむ、潜伏期間が長いため、これからも注意が必要なのじゃ
そうだよね、ときどき町を歩いていると古い建物が解体されている場所があるけど、100メートルくらい距離をとって通り過ぎるようにするよ
・・そこまで神経質になる必要はないと思うが・・・
これまで色々な人たちが苦しんできたんでしょ?裁判になったりはあるの?何か良い判例がわかる本があれば紹介してよ
リンク
ありがとう!漫画だからわかりやすそうだし、飽きずに最後まで読めそうだよ!
最後までお読みいただきありがとうございました。