あなたは「不育症」という言葉をご存じでしょうか?
「不妊症」という言葉は耳慣れているかもしれませんが、
「不育症」は何だか聞きなれないですよね。
今、この「不育症」に苦しむ女性は多いのです。
そこで、不育症とは?検査の方法や原因、治療方法についてまとめてみました。
不育症とは?
不妊症と違い妊娠することはできても赤ちゃんを出産するまで、
お母さんのおなかの中で育てることができず、
流産や死産が2回以上おきてしまうと「不育症」とよばれます。
不育症は、妊娠して、赤ちゃんの心臓が動き出していても
気付いた時にはおなかの中で赤ちゃんが亡くなってしまうのです。
亡くなった赤ちゃんは初期であれば「流産」といわれ、
自然に大量の出血とともに出てしまうこともありますが、
おなかにいる場合は手術でかきだす、
もしくは大きくなった赤ちゃんの場合は「死産」といわれ、
分娩と同じ要領で出産することになります。
不育症の検査の方法は?
不育症の原因を探るための一般検査は不妊治療の検査と重なる部分も多いです。
そのため、自治体の不育対象外の不妊治療助成金の対象になることがあります。
対象になるかの詳細はお住いの近くの自治体に確認してみましょう。
不育症の原因を探る基本的な検査のうち保険適応となる検査とは?
以下6種類が対象とされています。
1.血液一般検査
2.甲状腺機能検査(T3・ T4・TSH)
3.卵巣機能検査(E2・P・ PRL)
4.リュウマチ検査(ASLO・ RAテスト・LEテスト)抗核坑体
5.ウイルス抗体価測定(サイトメガロ・風疹・単純ヘルペスⅠ・Ⅱ・帯状ヘルペス・トキソプラズマ・マイコプラズマ・クラミジア)
6.細菌学的検査(子宮膣部細菌培養)
不育症の原因を探る保険適応外の特殊検査とは?
初診の様々な検査の結果を元に、さらに原因を特定していくための検査です。
人によって必要なものと必要でないものがあります。
7.夫婦染色体検査
8.NK細胞活性
9.坑リン脂質抗体検査(抗カルジオライピン IgG抗体)
10.抗カルジオライピン IgM抗体
11.抗PE抗体 IgG抗体
12.抗PE抗体 IgM抗体
13.XII因子
14.プロテインC
15.プロテインS
16.ループスアンチコアグラント
17.空腹時血糖検査随時検査
- 女性の場合・・・月経周期に合わせて変化する子宮やホルモンの状態
- 男性の場合・・・体調によって変化する精子の状態
を時期や必要に応じて行う保険適応の検査
18.子宮内膜検査
19.月経血結核菌培養検査
20.子宮卵管造影検査
21.精子検査
22.糖負荷テスト
23.ホルモン負荷テスト
24.子宮鏡
これらの検査以外にも、治験と言われる実験段階の治療法もあります。
不妊症と同じく、出産を迎えるまでの間これらの検査を繰り返し行います。
不育症の原因と治療は?
不育症の原因は主に下記2種類があります。
胎児の染色体異常
不育症の原因で最も頻度の高いものは、胎児の染色体異常です。
この場合、胎児の問題のため産まれてくるまで治療ができません。
抗リン脂質抗体症候群
それ以外の原因には、抗リン脂質抗体症候群です。
本来、免疫が自分以外のもの(抗原)を排除してくれて、
生体機能を保つことができますが、
免疫の⽭先が自分に向いてしまい障害を起こす病気が自己免疫疾患で、
不育症の原因に、自己免疫異常のひとつである
抗リン脂質抗体症候群が原因となっていることが
検出頻度の高い項目とされています。
他にも血が固まりやすいことで
お腹の赤ちゃんに栄養が送れないことが原因となる
- 血液凝固系異常
- 子宮形態異常
- 甲状腺機能異常
- 夫婦染色体異常
などがありますが、検査をしても明らかな異常が判らない方も多いため、
原因のわかる場合は治療し、改善を待つことができますが、
原因不明の際は想定される原因への対処しかできません。
不育症の人にやさしい病院は?
不育症の場合、うまくいけば妊娠して40週を迎えることができる可能性があります。
しかし、いつおなかの中の赤ちゃんが命の灯が絶えてしまうかわかりません。
とはいえ、お母さんが気をつけようがないのも現実です。
毎日赤ちゃんの心音が確かめられたら・・・
と誰もが願いますよね。
東京の日本医科大学には、
TLC外来という不育症の既往を持つ人にやさしい外来があります。
通常妊娠の診断がつくと、次回健診は早くても2週間後、
長いと4週間後になってしまいますが、
TLC外来は、そんな不安を少しでも和らげるため、
妊娠のごく初期(胎嚢が見える前から)から
少なくとも1週間に1回は来ていただき、診察をする外来です。
特別な薬を使うわけでもなく、魔法を使うわけでもありませんが、
TLCにより赤ちゃんが産める確率が高まったという科学的データも出ています。
→日本医科大学
不育症とは?検査の方法や原因、治療方法についてまとめてみました おわりに
不育症の治療は保険適応外の検査や治療が多く経済的負担は大きいのが現実です。
妊娠後、無事出産するまで治療は続き入院が必要な場合もあります。
また、妊娠できない不妊と同じく、
妊娠しても流産や死産を繰り返すことの精神的負担は想像以上です。
妊娠22週を過ぎると流産ではなく死産となり、
普通分娩もしくは帝王切開での出産をするため母体への負担も大きくなります。
そして、その翌日には、退院し我が子の葬儀の準備をしなければならないのです。
同じように不育症で哀しい経験をする人は意外と多くいます。
同じ体験をしている人に話を聞いてもらえるだけで、
一歩進めたり立ち止まれたりすることができるかもしれません。
このような哀しい経験をする人が一人でも減りますように。
最後まで読んでいただきありがとうございました。